格差にまつわる平成の出来事(AERA 2019年4月8日号より)
格差にまつわる平成の出来事(AERA 2019年4月8日号より)

 平成という時代は、バブル景気など好景気に沸いた「金ピカの時代」でありながら、「一億総中流」から「格差社会」へ転換し「貧困」が露呈した時代でもあった。そこに希望はあるのか。ジャーナリスト・竹信三恵子氏がリポートする。

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「金ピカの時代」の記憶に呪縛され、現実への直面を避け続けた「派遣村」以後を、『下流老人』の著者、藤田孝典(36)は、「停滞の10年」と呼ぶ。「民主党政権時代、『貧困の可視化』は実現した。だが貧困は高止まりし、根本的な改善はされていない」と見るからだ。

「原因は、政治や政策に任せれば解決するという政治主義の幻想。困っている人の権利を守っていくための、当事者と一緒の運動づくりを地道に行う以外道はない」

 ただ、そうした「当事者と一緒に歩む運動づくり」の小さな芽がいま、若い働き手の間で生まれている。19年2月、自販機会社のジャパンビバレッジ労組が同業の大蔵屋商事労組と合同で、未払い残業代などを求めてストライキを打った。ストに参加したジャパンビバレッジの男性正社員(33)は、高校卒業後に大手自動車会社で派遣として働き、リーマン・ショックで「派遣切り」にあった。

 当時は労働運動で解決しようという気は起こらなかった。だが今回は、極端な長時間労働や残業代の未払い、上司のパワハラ的な言動に疑問を抱き、同年配の同僚らが結成した労組に参加した。男性は言う。

「労組ができたら上司が発言に気を付けるようになり、風通しのいい楽しい職場になった。労組がこんなに役に立つことを、もっと知ってほしい」

 18年12月には東京都練馬区立図書館でもストの動きが出た。一連のストへの支援の声も目立つ。

「30年かけて格差や貧困が深化し、日常にまで浸透した結果、もう自己責任などと言っていられなくなった」

 と若者労働NPO「POSSE」の代表理事、今野晴貴(35)は指摘する。

 平成が「格差の時代」で終わるか、貧困の深化を生かした「格差克服の出発点」となるか。未来は新しい芽の広がりにかかっている。(文中敬称略)(ジャーナリスト・竹信三恵子)

AERA 2019年4月8日号より抜粋