カナダ当局がファーウェイ幹部を逮捕したのが12月1日。懲役15年の判決が出た後に、急激に両国関係が悪化したことになる。カナダ外務省は、ファーウェイ幹部の逮捕後、1月3日までに中国でカナダ人13人が拘束されたと明らかにしている。

 こうした時間的な背景があり、トルドー首相が批判。一方の中国外務省の華春瑩副報道局長は「カナダ側こそ最低限の法治精神すら欠けている」と語気を強めた。緊張関係は強まり、両国がそれぞれ自国民に、相手国へ渡航する際は身の安全に注意するよう呼びかける事態に至った。

 カナダは自国では死刑を廃止している。09年、同じく死刑がない英国の被告が中国で麻薬密輸罪に問われ死刑判決を受けた際、執行停止を求める英国と中国の間で外交問題になった。今回、死刑判決が出ればカナダを刺激することは、中国当局としては織り込み済みだったはずだ。

 その上で中国の法院(裁判所)は、上級審以降の審理を海外メディアも含めて公開した。極刑判決が出た場合、多くの報道がなされ、外交的な刺激が強まるようなメディア戦略を、あえてとったともみえる。中国メディアは死刑判決を一斉に速報。ただ、無罪か重刑かが問われた裁判の争点部分は扱わず、「結果」のみを報じた。被告が否認していたことも伝えられなかった。

 被告側は死刑判決を不服として再度、上訴した。次の上級審で上訴が棄却されれば、死刑判決が確定に向かう。両国間の火種は、さらに大きくなる。(朝日新聞記者・平井良和)

AERA 2019年2月4日号