油圧機器大手KYBの免震・制振ダンパー検査データ改竄で、マンション住民の不安が高まっている。不適合ダンパーが使われていれば、価値は低下。交換は順番待ちだ。
【写真】KYBが公表したリストに含まれていた中央合同庁舎4号館の地下部分に設置されているダンパー
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KYBは建築基準法に基づく国土交通大臣認定などに適合しない免震・制振ダンパーを大量に出荷していた。その数は全国で983件、1万本以上。住宅は250件を超える。
国交省は、不適合ダンパーについて「震度6強から7程度の地震に対して倒壊するおそれはないとの見解が第三者機関から得られている」と10月16日に発表。続けて不適合ダンパーが使われた建築中の物件の仮使用を認める通知を、指定確認検査機関などに出した。火消しに躍起となっている。
しかし、当事者にとってはマンションの「資産価値」を左右する由々しき問題である。2015年に発覚した東洋ゴム工業の免震ゴム性能偽装に続く、厄介な事態なのだ。KYBの免震装置を使っている、首都圏の超高層マンションを訪ねた。管理組合理事長が現状を語る。
「ダンパーが改竄対象かどうか調査中です。住民は比較的落ち着いていますが、マンション名は公表しません」
ただし、宅建業法上、不動産会社は、マンションの住戸を売買する際、契約にかかわる「重要事項」で消費者にダンパー問題を説明しなくてはならない。
「それは仕方ないけれど、マスコミに名前は出さない方向。もしもうちの免震装置が不適合だったら、どれだけ早く交換してくれるか。そこが最大のテーマ。東洋ゴムは、まだ6割弱しか交換・改修が終わっていないらしい。やはり、声が大きいところが先でしょうから、優先順位の上にくるよう働きかけます」と管理組合理事長は話す。
国交省は、指示書で「オイルダンパーの交換その他必要な対策を、最後の1棟、1本まで速やかに遂行」するようKYBに求めた。ダンパー交換はKYBに課せられた義務だ。
しかし、KYBの製造能力では、ダンパー交換が完了するのは、早くても20年9月といわれている。実際に交換・改修を進める「順番」はそう簡単に決まりそうにない。