加計学園問題の際には「あったもの(文書)をなかったことにはできない」と政府・官邸批判をした前川喜平・前文部科学事務次官の個人スキャンダルを率先して報じていたのと比べ、政権と冷静に距離を保とうとしているように見える。岸田文雄・自民党政調会長や野田聖子総務相が放送法4条撤廃について慎重論を唱え始めたのも、そうした空気が背景にあるようだ。

 政治評論家の森田実氏はタガの外れた現政権をこう分析する。

「あまりに偏った佐川証言に続いて、なかったはずの自衛隊の日報が見つかったことで、国民の信頼は地に堕(お)ちた。通常国会の終わりごろに麻生太郎財務相が改竄問題で引責辞任することで総裁選に臨み、3選を夢見ていたのだろうが、奇跡でも起こらない限り無理でしょう。日米首脳会談でもトランプ大統領が望む農産物自由化を受け入れれば、農協にそっぽを向かれて次の総選挙も吹っ飛びかねない」

 森友学園問題の捜査網も日々狭まっている。財務省の職員が学園側に「トラックを何千台も使ってごみを撤去したと言ってほしい」と口裏合わせを求めていたこともわかった。

「現在の法務省は、安倍政権とパイプが太い黒川弘務氏が事務次官を務めているせいか、東京から立件についてのマイナス情報ばかり発信されています。しかし、大阪地検特捜部長は既に『9月までは異動はないからじっくり仕上げてくれ』と、大阪高検から発破をかけられたようです」(司法ジャーナリスト)

 かつては元首相をも捕縛した、地検特捜の真価が問われている。(編集部・大平誠)

AERA AERA 2018年4月16日号