国連の経済制裁が進む北朝鮮の経済や国民生活はどうなっているのか(※写真はイメージ)
国連の経済制裁が進む北朝鮮の経済や国民生活はどうなっているのか(※写真はイメージ)
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北京首都国際空港で、包装されて中身が分からない大きな荷物を、平壌行きの高麗航空で運ぶためにチェックインする北朝鮮の男性(写真:gettyimages)
北京首都国際空港で、包装されて中身が分からない大きな荷物を、平壌行きの高麗航空で運ぶためにチェックインする北朝鮮の男性(写真:gettyimages)

 日本列島を越えて弾道ミサイルをどんどん発射し、米国相手に挑発を繰り返す北朝鮮。国連の経済制裁が進む中で、経済や国民生活はどうなっているのか。

【写真】北京首都国際空港でチェックインする北朝鮮の男性

 今年7月下旬、アジアプレス大阪事務所代表の石丸次郎さんは、中国・遼寧省丹東市を訪れた。国境となっている鴨緑江の対岸は北朝鮮だ。平安北道朔州郡の青水里付近にあたる。岸辺では北朝鮮の男性らが、川の水を使って洗濯をしていた。

 のどかに見える風景とは裏腹に、国境地帯はピリピリとした緊張に包まれていた。鴨緑江に沿って鉄条網が果てしなく設置され、国境警備の兵士があちこちに立つ。川に出ることができるのは、国境警備隊の許可を得ている人たちだけだ。

「北朝鮮側には鉄条網なんて、ほとんどなかった。それが国境のほぼ全域に張られだしたのは、金正恩政権になってから。脱北者や密輸が多い最上流の地域では、鉄条網に高圧電流を流し始めた場所もある」

 と、石丸さん。「この政権下で、明らかに国境警備の質が変わった」と強調した。

 中国との国境地域は、密輸をしたり、国外へ逃げた脱北者からの送金を受ける代理業を請け負ったり、何かと現金が落ちる地域だった。それも国境警備の強化によって、かつての潤いは見られなくなっている。

 石丸さんによると、警備強化の背景には、脱北者問題がある。累計3万人を超えた韓国への脱北者の一部が、本国の親族らに、北朝鮮当局では監視が徹底できない中国通信網を使った携帯電話を裏ルートで渡して、連絡を取り合う。その結果、「呼び寄せ型」の脱北が増えた。韓国と北朝鮮の間に、ヒト、カネ、情報が行き交う秘密の情報ルートができたことになり、金正恩政権にとっては、体制を揺るがしかねない脅威に映った。これが「脱北は、ほぼ不可能になった」と石丸さんが言うほどの厳しい国境警備につながった。

 変化はほかにもある。これまで約900人の一般国民に取材をし、今も約10人の協力者が北朝鮮にいる石丸さんが最後に同国へ入ったのは98年。大規模な飢餓が起き、数百万人が命を落とした時期だ。それがいまでは、飢えで命を落とす人はほとんどいない。食事も粗末な雑穀だったのが、白米を食べられる日が増え、年1度の肉が月1で食べられるようになった。

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