「任期が切れる時に条件をクリアすれば、任期なしで雇用する」と言われたが、役職は助教で変わらないうえ、採用の枠が限られているので厳しそうだ。その上、大学運営の基盤的経費である運営費交付金が削減されているとして、教授などが定年退職後にポストが空いた後も、教員の新規雇用を制限することを最近、大学が決めた。

「うちだけではなく、他の大学でも若手が得られるポストが減っているので、椅子取りゲーム状態になっています。他の大学や研究機関でもポストを探していますが、どこも同じ状況です」

 平日は、朝8時から夜9時まで大学で過ごす。研究のほか、授業は実習を担当している。土日は休めるが、実際には実験や勉強で大学に来ている日が多いという。毎年、論文を1~2本出すのが目標だ。

「任期付きの教員は、研究成果で評価され(雇用の継続の可否が決ま)るので、確実に成果を出さないといけない、というプレッシャーがあります。研究の自由度は減りますよね」

●研究にはお金がかかる

 研究成果を上げるには、当然、研究をしなければならない。研究をするには、機材や試薬の購入のほか、研究室の維持、人件費などにお金がかかる。そのための研究費が必要だが、大学から支給される研究費では、十分な研究活動を行うには到底足りない。文科省の調べでは、大学などから支給される個人研究費は、6割が年間50万円未満で、10万円未満と回答した研究者も14%いた。特に国立大学では、04年の法人化以降は運営費交付金が毎年削減されているため、大学から研究室に配分される研究費は年々減っているのだ。

 一方で、

「私たちの生命科学分野の研究では、ひとつの結果を出すために多くの実験が必要です。その経費は増えています」

 と前出の男性は言う。年間数百~数千万円かかる研究もある。

 そこで、研究計画を書いて国の競争的資金に応募する。競争的資金とは、運営費交付金とは異なり、国などが研究者から研究計画の提案を募り、審査をして、採択された計画について、配分される研究費のことだ。競争的資金のうち2272億円が科学研究費補助金(科研費)で、主に大学などの基礎研究を支えている。なお分野別では科研費の4割を生物系、3割を理工系が獲得しており、人文社会系は1割強だが、他の競争的資金では人文社会系はさらに少ない。

 文科省の競争的資金は総額で年間4119億円(16年度)で増加傾向。これらを全国の研究者らが競い、採択されれば研究費として獲得するというわけだ。

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