検察から聴取を求められている朴槿恵(パククネ)大統領。なぜ韓国の大統領は任期が終わりに近づくと問題が噴出するのか (※写真はイメージ)
検察から聴取を求められている朴槿恵(パククネ)大統領。なぜ韓国の大統領は任期が終わりに近づくと問題が噴出するのか (※写真はイメージ)
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 大統領やその周辺が、金銭まみれの事件に巻き込まれる国。韓国のそんな不名誉な連鎖は、今回もまた断ち切られることはなかった。

 韓国の朴槿恵(パククネ)大統領(64)が、検察から聴取を求められている。実現すれば現職大統領としては憲政史上初。

 親交があった崔太敏(チェテミン)牧師の娘で40年来の付き合いの知人女性、崔順実(チェスンシル)容疑者(60)=詐欺未遂容疑などで逮捕=への大統領府の文書の流出や、この女性が絡む不可解な財団の設立への関与が問われている。

●王朝時代の感覚いまも

 軍事独裁の時代に比べると縮小したとはいえ、軍事境界線が民族を分かつ分断国家・韓国では、大統領に多くの権限が集中している。人事ひとつとっても、最高裁にあたる大法院や憲法裁判所の裁判官、公共放送の韓国放送公社(KBS)の社長などは大統領が任命する。

 根強い儒教文化や朝鮮王朝時代の感覚も残り、国王と政治指導者の中間ぐらいに位置する絶対権力。韓国メディアは原則、大統領の日程を独自取材でつかんでも報じてはいけない。青瓦台(チョンワデ)(大統領府)担当の記者たちが作業する建物は、大統領が執務する棟とかなり離れており、詳しい動静はわからない。閣僚や官僚らは「VIP」と呼んで仰ぎ見る。

 だが、権力のあるところに利権は生まれる。最高権力者自身には難しくとも、家族や側近などに便宜を図ってもらおうとする人々が群がり、いきおい巨額の金銭が行き交う。これまで金泳三(キムヨンサム)、金大中(キムデジュン)、盧武鉉(ノムヒョン)、李明博(イミョンバク)の歴代大統領周辺の多くが、直接的な権限がないのに口利きなどで対価を得る、韓国独特の「あっせん収財」容疑で逮捕されてきたのは、そのためだ。

 朴氏は11月4日、国民向けの謝罪談話で、不正が起きないように「家族間の交流まで断ち切って孤独に過ごしてきた」と語った。両親を凶弾で失った朴氏には妹と弟がいるが、元来の折り合いの悪さもあり、徹底して2人と距離をとってきた。

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