「東電を取材していた報道の人が『それ以上取材するとドラム缶に入って川に浮かぶ』と脅され、私にも気を付けてと言ってくれたことがありました。また、日本海横断航路問題を使って知事の首を取るプロジェクトがあるということも聞いています。ちょっと前には何者かに車で後をつけられました。その利権者はだれなのか。はっきりとした証拠がないのでいまはこれ以上話せませんが、いろんなことがあったのは事実です」

●踏みとどまった脱原発

 知事選に話を戻すと、自民、公明は前長岡市長の森民夫氏を推薦。一方、共産、社民、自由の野党3党は医師や弁護士として活動し、泉田路線の継承を公言する米山隆一氏を擁立した。

 政権与党の支援を受けた森氏が当選すれば、柏崎刈羽原発の再稼働の動きが加速することも十分に考えられる。危機感を抱いた脱原発派は早速、米山氏支援に動いた。再稼働阻止全国ネットワークに所属する東京在住のメンバーたちが初めにやったことは、民進党へ米山氏の支援を要望することだった。

「民進党の新潟県連は米山氏を推薦せず、自主投票を決め込みました。支持母体の連合の組合員に東電関係者が多数いるためだと聞いています。そこで我々は民進党本部へ乗り込み、党として米山氏を応援するよう求めたのです。そもそも米山氏は先日まで民進党所属。それを応援しないとはけしからんと抗議しました」(再稼働阻止全国ネットワークの山田和秋氏)

 そのかいもあってか、選挙戦最終盤に蓮舫代表が新潟入りし、米山氏の選挙応援演説をした。山田氏らも新潟で昼は街頭演説の応援、夜は2千件に上る電話で米山氏への投票を呼びかけた。序盤は森氏が大きくリードしていたが、米山陣営も徐々に追い上げていった。

「原発は怖い。事故が起きたら生活基盤が危うくなる。だから泉田路線を引き継ぐ米山さんを応援するという声がだんだん多く聞かれるようになったのです。それに泉田さんは圧力で辞めさせられたと考えている県民も多かった。途中から、これはいけるなと感じました」(山田氏)

 ふたを開けてみれば米山氏は53万票近くを獲得。次点の森氏に6万票以上の差をつけて勝利した。米山陣営のスタッフですら、「手ごたえは感じていたが、まさかこんな大差で勝つとは」と驚くほどだった。
 再稼働阻止全国ネットワークの共同代表を務めるルポライターの鎌田慧氏はこう期待する。

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