
上からはプレッシャー。下からは突き上げ。両方にさらされる存在が「課長」だ。日本経済が停滞する中、労働環境の厳しさも増している。それでも結果を出さねばならない。「課長」が大切にする基本とは。
カルビーのかっぱえびせん、チチヤスのヨーグルト、ローソンのからあげクン、そして明星の一平ちゃん──。
数々の商品がコラボを熱望する今夏最大のヒット・フレーバーがある。
「瀬戸内レモン」だ。
火つけ役となったのは、広島県・まるか食品の「イカ天瀬戸内れもん味」。開発者いわく「やりすぎ」というくらいにレモン風味を強めたのがウケて、2013年の発売以降、750万袋を突破する大ヒット商品になった。
4年前まで「おしい! 広島レモン」と言われていた県産のレモンを全国区にするべく、広島県が縦割りを取り払って仕掛けた起死回生の一手だった。中核は、大濱清課長(51)率いる農業経営発展課と、大内貞夫課長(54)率いる観光課だ。
●レモンに懸けてみよう
12年、タレントの有吉弘行を起用した「おしい! 広島県」という観光PRキャンペーンでは、店舗数は人口比で日本一なのに、まるで大阪のアレンジであるかのように「広島風」と言われるお好み焼きや、修学旅行でしか行かない宮島などと並び、国内では57%のシェアを誇り生産量は日本一なのに、全国的には全く知られていない“おしい”存在が「レモン」だった。
広島にレモンがやってきたのは明治31年。現・呉市が和歌山県から購入したネーブルの苗木にレモンが3本交じっていたという、これまた“おしい”始まりだった。
瀬戸内海の気候はレモン栽培に適しており、瞬く間に国内有数の生産地に。輸入と違い防カビ剤が使われていないため、皮ごと食べられて健康志向な人たちへの需要は高い。1キロあたりの単価も温州みかんの198円に比べ、レモンは273円と高い。大濱さんは言う。
「名産である温州みかんの価格が低下していたこともあり、県を挙げてレモンに懸けてみようとなったんです」
いくら品物が良くても、知ってもらわなければ意味がない。どうやって全国の人に届けるか考えた末に出した結論は「有名企業を巻き込むこと」だった。初めに声をかけたのは飲料メーカーのカゴメだ。「瀬戸内レモン協定」を結び、カゴメは商品の発売、広島県は名産品を多くの人に体感してもらうことを目指した。輸入レモンと広島レモンの食べ比べなど勉強会を重ねていき、「瀬戸内ブランド商品」として発売された「野菜生活100瀬戸内レモンミックス」は、1600万本を超えるヒット商品となった。
瀬戸内の観光名所があしらわれたパッケージを担当したのは観光課だ。大内さんは言う。