アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はカシオ計算機の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■カシオ計算機 営業本部 戦略統轄部 QV戦略部 企画室長 仁井田隆(50)
スマートフォンのカメラ機能の向上で、コンパクトデジタルカメラは苦戦が続いている。しかし、それでもカシオ計算機は誰でも手軽に使えるデジタルカメラにこだわる。
「カメラを、ビジュアルを通しての“コミュニケーションツール”として位置づけ、業界の常識にとらわれないものづくりを心がけています。チームのメンバーにも“デジタルカメラを使って生活がどう楽しくなるかを考えて企画を立てよう”と声をかけています」
1996年からデジタルカメラを担当している仁井田隆の考え方だ。
スマホに取られたシェアを奪い返すのではなく、共存して楽しめるカメラを目指す。「自分撮り」機能へのこだわりもそのひとつ。中華圏では、モデルの女の子が自分撮りに使用していたことがSNSで話題になり、カシオのカメラが大ブームに。自分撮り=カシオという揺るぎない地位を築いた。
仁井田にも今回、自分の姿を60日間、撮影してもらった。海外出張、演劇鑑賞、飲み会、バンド活動、TOEIC、野球観戦、妻・息子との休日……全154枚を見て、一言。
「自分の2カ月がこうして残るのは新鮮。知人に、一緒に撮ろうと声をかけてコミュニケーションも活発になった。自分撮りは、“おじさん”にとっても楽しい」
静岡大学人文学部経済学科を卒業して89年に入社し、現在は国内とアジア地域の商品企画や事業計画の立案、マーケティングの要として6人の部下を束ねる仁井田のモットーは、「楽しむこと」だ。
きっかけは40歳のとき。池波正太郎の「死ぬために生きる」という死生観に大きな影響を受け、なんでも躊躇せずトライし、楽しんで生きようと決めた。
「仕事は大変だけど、それも含めて自分の人生。オン・オフの区別なく楽しんでいる」
そこから生まれるアイデアが、人々の笑顔を写し出す。
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2016年1月11日号