裁判では認定されにくいパワハラとは(※イメージ)
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 各都道府県の労働局に寄せられる「いじめ・いやがらせ」相談は、1年間で6万2千件(2014年度)。12年度に「解雇」を抜いて相談件数のトップに躍り出た。

 いまは都内のメーカーで働く女性(40代)が、外資系の金融系会社で課長を務めていたころの話だ。関西支店から、40代の男性が部長として異動してきた。初の東京勤務。明らかに気負っていた。

「支配欲が強く、自分の思いどおりにならないとイラッとするタイプでした」(女性)

 部長は、女性の会議中の発言には繰り返しダメ出し。ここまでなら、百歩譲って「厳しい上司」かもしれない。しかし、あるトリガーが「厳しい上司」という認識を「パワハラ上司」へと変えた。

「会議の席上で、怒気を含んだ口調で『お前なー!』と言われたんです」

 自分のなかでかすかにあった「上司への信頼」が瞬時に爆散した。

 上司は女性の部下にも直接、干渉してきた。彼を迎えたチーム会議の席で、若手の男性部下が言った。

「全否定ばかり。どこがダメなのかわかりません。具体的に言ってくださいよ!」

 上司は怒声とともに男性部下に平手打ちを見舞った。

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