国家発展改革委員会がウェブに公表した独禁法違反の報道資料。日本企業の名前がずらりと並ぶ(撮影/写真部・加藤夏子)
<br />
国家発展改革委員会がウェブに公表した独禁法違反の報道資料。日本企業の名前がずらりと並ぶ(撮影/写真部・加藤夏子)
この記事の写真をすべて見る

 外資が優遇を受けた時代は過去のものとなりつつある。中国の独占禁止法違反で多くの企業が摘発されているのだ。

「このメールを見たあとは削除してください」

 中国の独占禁止法違反で摘発された日本企業同士が、自動車部品価格をつり上げるためにやりとりしたメールにはこんな文面が残されていたという。

 削除されたメールをサーバーから拾い出し、証拠をつかんだ中国の独禁法執行当局である国家発展改革委員会は3月から本格調査に動きだした。

 デンソー、住友電気工業、日本精工など10社に罰金約200億円相当が科される。中国メディアによれば、最初に調査に協力したのは日立オートモティブシステムズとされ、次に不二越も応じ、4月には「重要な証拠」を中国側は手に入れたという。鉄の結束は崩れ、この2社は罰金を免除。カルテルにかかわった各社の幹部が次々と同委員会に呼ばれて膨大な陳述書を取られ、一網打尽にされた。

 このカルテル摘発を「外資たたき」「日本企業いじめ」と受け止めるのは、いささか中国に不公平な話かもしれない。

 中国で独禁法施行は2008年と新しい。日本からノウハウの多くを学び、本格運用は昨年に始まった。最初の標的はサムスンやLGなど液晶パネル大手6社。次は高級蒸留酒「五糧液」や「茅台(マオタイ)酒」を扱う国内販売業者2社。フランスの食品大手ダノンらも巨額の罰金を科された。

 独禁法だけではない。中国内外の金融関係者を驚愕させるニュースが今年6月に流れた。中国の会計検査院に相当する審計署が、中国銀行、中国農業発展銀行、そして中国投資(CIC)に乱脈融資があったと発表したのだ。特にCICは中国が溜め込んだ外貨準備を運用する政治銘柄の超重要企業。まさに「聖域なき摘発」だ。

AERA 2014年9月15日号より抜粋