

障害者雇用促進法ができて今年で60年。一昨年には中央省庁の「偽装雇用」が発覚するなど法の精神がなかなか浸透しない中、「仕事」に農業を組み込んで、障害を持つ人たちの働く場を作る試みが注目されている。健常者と障害者をつなげる農業とは──。「職場は農場」の現場を取材した。
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奥行き30メートルほどのビニールハウスが連結された広い空間の農場には、ハウスの区画ごとに企業名が書かれた看板が掲げられている。障害者の就労支援を行う「エスプールプラス」(本社・東京)が管理・運営する企業向けの貸農園「わーくはぴねす農園 柏ファーム」。様々な業種の企業が区画を借りて、各会社に雇用された障害者の社員が福利厚生事業として野菜作りに励んでいる。
1社あたり3人の障害者と1人の管理者がチームを組んで、プランターを使って様々な作物を作る。収穫した野菜は自社に送られて、社員に配られたり社員食堂で使われたりする。
ラコステジャパンの社員として2018年から柏ファームにある「ラコステファーム」で働く桑原裕介さん(36)は、こう話す。
「野菜を育てるのは手間がかかるけど、うまくできたときは楽しい。やりごたえはあります。経験を積んで、葉野菜を主軸にもっと数を作っていきたい」
年下の2人の同僚男性社員とともにワニのワンポイントがついた自社のポロシャツを着て作業にあたる。ラコステファーム農場長の管理者の指導を受けながら、小松菜、水菜、サンチュ、リーフレタス、ラディッシュ、ナスなど多くの品種を手がけてきた。
17年開園の柏ファームは、隣接する第2ファームと合わせて約2万6千平方メートルの敷地に32棟のビニールハウスを展開する。農場は障害者が安全・清潔に作業できるように、様々な工夫が施されている。軽石の砂を入れた養液栽培で野菜を育てる。土を使わないためほこりが舞うこともなく、清潔な環境が保たれている。転倒時のけが防止のためにコンテナは発泡スチロール製。スコップなどの道具は軽くて安全なプラスチック製が使われている。