だから、国民の多くはアベノミクスに満足しているのではなく、どの野党からも対案が示されないので、やむなく我慢しているのである。
どの野党も、政権を運営する具体策を示していない。だから、安倍内閣は少なからぬ問題を噴出させながら、7年間も続いているのであり、そのために、自民党の議員たちが緊張感を失っているのである。
さらに問題は自民党自体にもある。
かつて、自民党の首相が辞任するのは、野党との闘いに敗れたためではなかった。自民党には反主流派、非主流派などがあり、党内での論争に敗れて交代したのである。岸信介、田中角栄、福田赳夫、大平正芳、宮沢喜一らである。その意味では、自民党は自由で民主的な政党であり、自由に論争ができたのである。
だが、選挙制度が小選挙区制に変わって、事情は大きく変わった。
小選挙区制では、一つの選挙区で党から1人しか立候補できない。そして、立候補するには党から公認されなければならない。そのために、候補者は党の執行部に気に入られなければならず、いってみれば安倍首相のイエスマンにならざるをえない。安倍首相は、野党にも、党内の誰にも気を使う必要がないことになる。
安倍内閣の閣僚たちがこれほどガタガタになっていて、かつてならば、党内で「次は自分だ」と名乗り出る人間が必ずいたのだが、それが誰もいない。情けないかぎりである。
※週刊朝日 2019年11月22日号