SING LIKE TALKING/佐藤竹善(ボーカル、ギター&キーボード)、藤田千章(キーボード&シンセサイザー)、西村智彦(ギター)からなるバンド。88年メジャーデビュー。アルバム「ENCOUNTER」(93年)、「togetherness」(94年)が、オリコン初登場1位に (撮影/写真部・掛祥葉子)
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 昨年秋、デビュー30周年を迎えた。

「“長くバンドを続けていくコツは何ですか?”とよく聞かれるけれど、そんなものがあるなら、こっちが聞きたいです(笑)。バンドって、最初は同じ音楽が好きな奴らが集まっても、続けていくうちに個人のアイデンティティーが固まって、それぞれの志向が離れてしまうことがある。僕も、この30年の間には、ソロ活動中心の時期もありました。いろんな経過をたどれたことが幸せですね」

 そう振り返るのは佐藤竹善さんだ。平成という時代を迎える3カ月前、SING LIKE TALKINGはデビューした。多くの音楽通にその実力を認められながら、最初はなかなかヒットに恵まれなかった。

「僕らの気持ちを占めていたのは、僕ら自身が聴いて素晴らしいと思える音楽を、どこまで追求していけるか。その一点のみでした。メジャーデビューしたら売れなきゃいけないのがバンドの宿命かと思いきや、周りのスタッフも、『好きにやっていいよ』と。最初のアルバム3枚は売れなくて、『そろそろ契約を切られるかも』と思った時に、『Steps Of Love』という曲が広く認知されて、またバンドとして好きな音楽を続けられる猶予ができた。6枚目と7枚目のアルバムが、オリコン1位になって、ようやくレコード会社に恩返しができたんです」

 いい曲を作る。その一点のみに集中する音楽活動について、「愚直にやってきただけ」と佐藤さんは言う。

「僕らがここまで続けてこられたのは、僕らのやり方に、希望を感じてくれたスタッフとファンのみなさんがいてくれたからだと思う。一般のサラリーマンの人たちは、組織の中で、僕らのような、“好きなことを仕事にした”人間よりもずっと、仕事で忍耐を強いられているはず。でもだからこそ、我慢せず、妥協もせず、ただ愚直に音楽を作っている僕らを応援することに、一種の“誇り”を感じてくれているんじゃないか。そんな気がするんです」

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