話をユーミンに戻します。ユーミンの音楽は、今や『究極の客商売状態』の域にある音楽と言えるでしょう。通りすがりの大衆が手にし耳にする楽曲が何百とあり、アーティストの思惑とは別の次元で自由気ままに消費されています。それでいてユーミン側と顧客(ファン)の濃密な関係によって成り立つ『人気商売性』も、いまだ凄い熱量で確立し続けている。現在のエンタテイメント界においてこれを両立させるのは非常に困難なこと。

 元来、アイドルというのは『客商売性の極めて高い人気商売』の象徴(例:長嶋茂雄・美空ひばり・SMAPなど)でしたが、いつしかアイドル歌手もアーティストも限定的な顧客に特化した『人気商売度』が増し、よって大衆的なヒット曲や国民的アイドルが生まれにくくなってしまっています。そんな中、昨年大ヒットしたDA PUMPの『U.S.A.』は、久しぶりにリアルタイムであらゆる通りすがりたちに伝播した純粋な国民的流行歌でした。あの曲をきっかけに再びかつてのような『人気商売』のピッチに見事復活できるか、今年こそ勝負の年です。頑張れISSA! 頑張れDA PUMP!

 それにしても、『自ら出口を遠ざけるこじらせっぷり』がユーミンの魅力なのだとしたら、ユーミンは『国民的こじらせ屋』です。そして同時に日本人そのものもかなりの『こじらせ民族』ということになります。なんだかとても誇らしい。

週刊朝日  2019年1月18日号

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