ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
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写真はイメージです (c)朝日新聞社
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は「ファッション」について。

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 突然ですが、私にはスタイリストがいません。テレビ(ドラマなどは別)に出る際は、基本的に自分で着るものを選んでいます。もちろんそれらを製作してくれている優秀な衣装チームのお陰で、その時の気分や髪型、流行に合わせた服が定期的に作り届けられるため、着るものには困りません。とは言え、ただ着たい服を持っていけば良いというわけではないのです。番組の性質、セットや共演者との兼ね合い、立ったり動いたり座ったりのバランス、生放送ならばその日の天気、収録ならば放送予定日の季節感など、結構いろいろ気を配ります。また、気に入った衣装だと3回ぐらい着まわすので、それぞれの放送日が近づき過ぎないような配慮も必要です。

 服はメッセージです。服飾におけるメッセージとは、自分の役割を汲んだ上でスタンスを定め、それを目に見える形で伝えること。私なんてすでに存在自体が偏り過ぎていて、今さらメッセージどころではないだろうと思われるかもしれませんが、実は私のような超紋切り型のイメージを抱かれている人の方が、その逆を打った時のメッセンジャー力は高かったりもするのです。私は服装に『時代性』を込めることが多いですが、『分かりやすいコスプレ』は極力しないようにしています。演出上、制服を着たり誰かの衣装を再現したりすることはたまにあるものの、万人が認識できる記号的な格好よりも、服装の持つメッセージ性というのはもっと広義的であるべきというのが私の信条です。

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