ジャーナリストの田原総一朗氏は米・中間選挙の結果とその影響について解説する。
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世界中が注目していた、米国の上下両院の中間選挙の結果が判明した。
上院は事前から予想されていたとおり、共和党が過半数を保ったが、下院は民主党が過半数を獲得した。選挙が近づくにつれて、トランプ大統領の共和党が盛り上げて、情報通などが予測できない、と言っていたのだが、結局民主党が過半数を得た。
下院で民主党が勝ったのは、大統領選挙のときに予備選挙でサンダースに投票した民主党員たちの多くが投票所に行かなかった、つまり棄権したために、ヒラリー・クリントンが敗れてトランプ氏が当選したことを後悔して、今回は投票所に行き民主党に投票したためだと言われている。
特に、トランプ氏のあからさまな女性蔑視や、日本では大問題となったLGBTを“断固認めない”と言い切ったことなどに対する、民主党の女性たちの怒りが爆発した。大統領選挙では棄権した女性たちが、怒りをぶつけるために「トランプNO」の投票をしたのである。
中間選挙に出馬した女性候補者は上下両院で計250人を超え、過去最多を更新した。下院で当選した女性候補の圧倒的多数は民主党である。
そして、その中には米国の先住民やイスラム教徒も含まれている。先住民やイスラム教徒の女性が下院議員になるのは、これが初めてである。
若い世代の多くが投票に参加したのも、今回の中間選挙の特徴だと言われている。トランプ氏の露骨な反民主主義的なやり方に、女性や若い世代が強い危機感を抱いたのだろう。
だが、下院での敗北でトランプ氏の政策はどのように変わるのか。変えざるを得ないのか。
もっとも、外交政策は上院が実権を握っており、外交政策での変化はほとんどなさそうである。特に中国に対する、新冷戦ともいわれる強硬政策については、実はトランプ氏のやり方に強く反発している議会も、共和党と対立しているはずの民主党も同意しているのである。いわば、オールアメリカと中国との対決だ。