

漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「黄昏流星群」(フジテレビ系 木曜22:00~)をウォッチした。
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銀行のエリート支店長・瀧沢(佐々木蔵之介)は、美人妻・真璃子(中山美穂)がいながら、美人秘書(本仮屋ユイカ)からラブラブ攻撃されつつ、偶然出会った美人・栞(黒木瞳)と恋に落ちる。
そんな「課長 島耕作」みたいな、人生すべてラッキースケベってなうまい話があるかーい!と思ったら、やっぱり原作は弘兼憲史の漫画なのだった。
まぁしかし、このドラマが醸し出す黄昏っぷりがすごい。見た目キンキラなラブホテルの中に入ったら、壁紙が安い。照明が暗い。芳香剤が臭い。すべてが、やるせない黄昏だ。
出世コースをひた走っていた瀧沢は、いきなり出向を言い渡される。飲んだくれ、身も心もボロボロになり、ふと手にしたグラスの氷を見れば、それはまるでマッターホルンのよう。そうだスイス、行こう。
馬鹿なのか、アホなのか。失恋旅行でヨーロッパ行っちゃうOLなのか。そんなスイスの地で、「エーデルワイスが好き」などとのたまう女・栞と出会う。
でもね、この肝心のスイスがほとんど合成。まるっきりCG。ただのセット。そりゃ今時、スイスロケする予算なんてないわな。
それにしてもだ。マッターホルン行きロープウェイの発着所にあるおみやげコーナーはなんなんだ。壁にはとってつけたような折り目付きスイス国旗。
商品は、田舎の実家にあるような絵皿にマグカップ、そして籐のカゴに入った折りたたみ傘。ここは箱根か。隣で温泉まんじゅう売ってるのか。駅舎の片隅に喫茶「まったーほるん」とかあるんじゃないか。
ちなみに、ファンシーなエーデルワイス模様の折りたたみ傘を買ってしまう瀧沢。もう見ているだけで心が黄昏てくる。
ロープウェイで知り合った瀧沢と栞は、ディナーを共にし、ホテルの部屋でワインを開ける。そのワインの栓がコルクじゃなくて、ひねって開けるキャップっていうのが、また黄昏る。
瀧沢にいきなりキスをされ、姿を消す栞。しかし、なんということでしょう。栞は、瀧沢の出向先・倉庫会社の社員食堂のおばさんだったのです!
こんな黄昏た運命の再会、ある? かつてはキラキラドラマをきら星のごとく乱れ撃ちしたフジテレビのこの仕打ち。「黄昏お台場群」の夕陽が目にしみるのだ。
※週刊朝日 2018年11月9日号