安倍首相は、トランプ氏のG7の合意全否定をどのように捉えているのか。EU側は怒り、米国がとった鉄鋼やアルミニウムの追加関税に対して、世界貿易機関(WTO)に提訴している。それに対して日本政府は、いまだに態度を明らかにしていない。EUと違って、日本は米国と強い関係があり、拉致問題もある。EUのように“反トランプ”の姿勢を打ち出すのは難しいのだろう。

 だが、トランプ氏は米国が輸入する自動車に対しても関税をかけると言いだした。日本の対米輸出の3割は自動車なのだから、ここに高い追加関税をかけられたら、日本の自動車業界は大ダメージを避けられない。

 また、トランプ氏は、“イランから原油を輸入するな”と日本やEUに要求しているが、日本は原油の輸入だけでなく、少なからぬ企業がイランに投資しているので、トランプ氏の言うことは聞けない。

 これらは日本にとって大問題なのだが、国会ではまったく論議されない。野党だけでなく、自民党議員もまったく関心を持っていない。完全に政府任せで、閣僚たちも、はっきり言えば、安倍首相頼みなのである。トランプ氏や習近平氏と話し合えるのは安倍首相だけ、という空気が政府内にもできていて、これが安倍内閣の支持率の高さになっているようだ。お上頼み。どうもこの国に民主主義はなじまないようである。

週刊朝日  2018年7月20日号

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