

米国政府は予定通り、7月6日に中国に対して追加関税を発動した。ジャーナリストの田原総一朗氏は、この問題における日本の対応に苦言を呈する。
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米中の貿易戦争が勃発する危険性が高い。
きっかけを作ったのは、米国のトランプ大統領である。彼が米国第一主義を露骨に示し始めたのだ。
トランプ氏は3月23日に中国などに対して、“安全保障の脅威”を理由に、鉄鋼の輸入に25%、アルミニウムに10%の追加関税をかける措置をとった。これに対して中国は4月2日に米国産の豚肉やワインなどの輸入品128品目に、総額30億ドル(約3300億円)の報復関税をかけた。すると、トランプ氏は“米国企業に対する知的財産の侵害”という理由で、中国からの輸入品に対して総額500億ドル(約5兆5千億円)もの高関税措置をとると言いだした。これを7月6日に発動するというのだ。
2017年の米国の貿易赤字は約8千億ドル(約87兆円)で、そのうち対中赤字が約3800億ドル(約41兆円)と、およそ半分を占める。何としても中国に関税をかけたいと考えているのだろう。
だが米中貿易戦争が勃発すれば、当然、世界経済に大きな影響が及ぶ。
6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談の直前、6月8日から9日にかけて、カナダで主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開催された。ここでは貿易問題を中心に議論され、安倍首相はEU側と米国側との仲介にあたったとされている。
会議としては、“自由、公正で相互利益になる貿易と投資は成長と雇用創出の主要原動力”と確認したうえで、“関税障壁、非関税障壁の削減に向けて努力する”と宣言した。いわばEU側の主張を認めるかたちとなり、トランプ氏も一旦は承諾したのである。だが、彼は米朝首脳会談のために会議を中座してシンガポールに飛んだ。そして、シンガポールに向かう機内で、自身のツイッターで“自動車関税を検討するので、首脳宣言を承認しないよう政府担当者に指示した”と表明した。トランプ氏は、G7でようやくまとまった合意文書を全否定したのである。