ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムーの3人で結成された音楽ユニット「星屑スキャット」。耳に残る曲調と、絶妙なハーモニーでデビュー以来、ファン層を広げ、待望のファーストアルバム「化粧室」が25日に発売される。メンバーのミッツさんに音楽に込めた思いを聞いた。
──結成のきっかけは?
ミッツ:2005年に2丁目のドラァグクイーン3人で「歌謡曲、歌おうか」とイベントを始めたのが最初です。基本的に女装は「ごっこ遊び」ですが、そこから派生したものがどんどんリアルになった感じです。
──12年のデビューからアルバム完成まで6年。
ミッツ:私、43年生きてきて、こんなに手こずったことないんですよ。基本やると決めたら、すぐ結果を出してきた。でも音楽作りはそうはいかなかった。苦しみましたけど、時間をかけただけの価値はあるかな、と。私はずっと「虚構の世界で生きたい。歌を歌いたい」と思ってきたんです。作詞作曲も10代のころからやっていました。
──リリー・フランキーさんが詞を提供しています。
ミッツ:5年ぐらい前にリリーさんが「これ、星屑で歌って」と持ってきてくださったのが「新宿シャンソン」です。この曲を歌うようになって、初めて星屑スキャットに対する「需要」を感じました。それまではやはり刹那的な“オカマのショータイム”だったのが、だんだんと“音楽”として捉えてもらえるようになった。
──歌うことと女装に共通点はありますか?
ミッツ:私の演出理論としては、女装するときって役割や設定をその人につけるんです。一枚フィルターをかませたほうが、網戸の隙間から「ニョロッ」と何かが出てくるように、その人の個性も研ぎ澄まされる。だから単に自分の言葉でしゃべるより、歌という世界で歌詞という台本を通したほうが処しやすいし、より「自分」が出る。まさに化粧も同じです。
──タイトルも「化粧室」。
ミッツ:化粧室って人の本性がいちばん出るところですよね。戦いや駆け引きがあって、極めてパーソナルだけど連帯感も求められ、如実に格差が存在する空間。美と醜と汚と夢が同時に交差している。そして「仮初めの自分」に暗示をかけて、それぞれの外界へ再び出ていく。そんな場所じゃない?