ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「水卜麻美アナ」を取り上げる。
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『女子アナ』という呼称が定着したのが80年代後半。昨今、特に女性に対する呼び方や扱いにはとかく神経質になる中、『女子アナ』だけは何故か誰も異論を唱えないのも不思議な話です。個人的には『看護婦』も『保母さん』も『スチュワーデス』もステータス感溢れる誇らしい呼称だと思うので、意識と注意を払いながら『看護師さん』などと呼び換える際には、いつも心のどこかで「もったいないな」と感じます。
むしろ私が気になるのは、そこかしこで氾濫する『女子』の方です。『男子』も然りですが、『女子会』に始まり『肉食女子』だの『カープ女子』、『厨房男子』に『お化粧男子』など、成熟・成人・オトナという現実や責任から逃げているようで、痛々しさすら覚えます。男子・女子がまかり通るのは高校生まで。百歩譲って女子大生・新入社員ぐらいまでじゃないでしょうか? 成人して納税し、ましてや配偶者や子供がいる身で、自らを『男子』『女子』と呼ぶのならば、せめてある程度の羞恥心や自虐の精神ぐらい持っておきたいものです。世間も男女同権と同じくらい、この歯止めの利かなくなってしまった『女子問題』とそろそろ真面目に向き合わないと。『理想のオトナ女子ナンバー1・天海祐希(49歳)』って、もはや気を遣っているのかバカにしているのか分からない状態になっています。
話を『女子アナ』に戻しましょう。今や女子アナなくしてテレビ番組はほとんど成立しないぐらい、画面上の必須要素なわけですが、そんな群雄割拠の女子アナ界においてここ数年ぶっちぎりの人気を誇っているのがミトちゃんこと日本テレビの水卜麻美(みうらあさみ)さん。女子アナに限らず、テレビアナウンサーというのは、実はテレビに出ている誰よりも純粋に「テレビに出たい」「テレビ画面の中に存在したい」という意思を抱いている人たちです。そもそもテレビというのは非現実や超現実との遭遇場所であるにもかかわらず、その中で粛々と一般標準代表として存在することに努めるのがアナウンサーだとすれば、ある種彼らは『最もテレビに魂を捧げている人たち』だと言えます。