冬季五輪を利用して「ほほえみ外交」を行う北朝鮮。ジャーナリストの田原総一朗氏は、韓国・文大統領の北朝鮮訪問が実現するのではないかと予想する。
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今、韓国の平昌で冬季五輪が開催されている。9日の開会式には、北朝鮮のナンバー2である金永南最高人民会議常任委員長と、金正恩朝鮮労働党委員長の実妹である金与正氏が出席した。
開会式には、南北朝鮮の選手団が統一旗を掲げて、合同で入場する場面もあった。まさに、北朝鮮は冬季五輪を利用して強烈な「ほほ笑み外交」を繰り出しているのである。
これに対して、日米は非常に神経をとがらせている。
米国のペンス副大統領は、開会式前に行われた夕食会で、金永南氏と同じテーブルに着く予定だったが、主賓とあいさつを交わしただけで、着席することなく去ったという。日本の各新聞は、北朝鮮の「ほほ笑み外交」について、「北朝鮮は日米韓の強い関係を分断して、韓国を取り込もうとしている」と報じている。
現に、韓国の文在寅大統領は、金永南氏と複数回、会談している。そして、与正氏は文大統領に対して、実兄である正恩氏の考えとして、「早い時期に面会する用意がある。都合の良い時期に訪朝してほしい」と申し入れ、文大統領は「今後、条件を整えて実現させるつもりだ」と答えたということだ。
日米は、文大統領の北朝鮮に対するこうした前向きの姿勢に、強い不安、いら立ちを示している。
特に日本政府は、危機感を募らせている。2015年末に従軍慰安婦問題について、日韓両政府は「最終的かつ不可逆的」な解決を確認したのだが、文大統領は1月10日の記者会見で「国民の合意を得ていない」として認めず、日本側は「日韓関係に深い溝をつくりかねない」と強く批判した。そのためもあって、日本政府は文大統領の言動に不信感を抱いているのである。