最も被害が大きかった八木地区。通行困難な場所もあちこちに(20日午後、安佐南区八木)(撮影/写真部・東川哲也)
最も被害が大きかった八木地区。通行困難な場所もあちこちに(20日午後、安佐南区八木)(撮影/写真部・東川哲也)
高校3年生が行方不明になった現場では、自衛隊が捜索活動を続けていたが、22日、死亡が確認された(20日午後4時、安佐南区八木)(撮影/写真部・東川哲也)
高校3年生が行方不明になった現場では、自衛隊が捜索活動を続けていたが、22日、死亡が確認された(20日午後4時、安佐南区八木)(撮影/写真部・東川哲也)

 たった一晩で、町の様子も住民の暮らしも一変してしまった。8月20日未明、広島市北部の住宅街を豪雨による土石流が襲った。死者・行方不明者は、計90人近く(22日午後8時時点)、日を追うごとに被害の深刻さが明らかになってきている。

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 8月21日早朝、広島市安佐南区八木地区の住宅街の車道は、泥水があふれ、滝のようだった。脇道に入ると、大量の泥で沼のようになっている。まさに道なき道を消防の隊列について、土石流の傷痕深い山のふもとまでたどり着いた。戸建ての住宅が傾き、中は泥だらけ。車がひっくりかえり、電柱は折れ曲がる現場では、必死の救助活動が展開されていた。

「見えてきたぞ」

 消防隊員の掛け声が聞こえ、行方不明者の手がかりが見つかったようだ。災害救助犬が向かう。だが、大量の泥とがれきが行く手を阻む。

「ああ、ダメじゃけん……」

 とチェーンソーが何台も投入され、轟音が響き渡る。その脇には、行方不明者の家からきれいなまま発見されたひな人形が置かれる。捜索活動を見守る行方不明者の父親は「早く、見つかって……」と地獄絵巻の様相に涙を浮かべた。

週刊朝日 2014年9月5日号