BTS、小さな「幸せ」にテンション爆上げ…ドキュメンタリーで見せた素顔とプロ意識

AERA
 韓国で生まれ、今や世界のミュージックシーンで活躍するBTS。彼らのツアードキュメンタリー映画「BRING THE SOUL:THE MOVIE」が、8月7日から12日間限定で世界同時公開される。

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 グラミー賞の授賞式で、アジアのアーティストとして初めてプレゼンターを務め、ビルボードミュージックアワードで2冠達成。ホールジーやエド・シーランをはじめとするポップス界のビッグネームとのコラボレーションに、ユニセフのグローバルサポーター就任……。

 連日のように飛び込んでくるビッグニュースの主人公、それが7人組のボーイズグループBTSだ。

 韓国の弱小事務所から生まれ、デビューから5年足らずで、“アジアの音楽を無視してきた”アメリカやイギリスをはじめとする世界のミュージックシーンに、風穴をあけた。

 今月7日に全世界同時公開される映画「BRING THE SOUL:THE MOVIE(ブリングザソウルザムービー)」は、昨年8月、韓国・ソウルでスタートし、今年4月まで全世界20都市、計42公演で125万人の観客を動員した「BTS WORLD TOUR“LOVE YOURSELF”(ワールドツアーラブユアセルフ)」に密着したドキュメンタリーだ。MLBのニューヨーク・メッツのホームグラウンドであるシティーフィールドで4万人を魅了した北米ツアーから、イギリス、ドイツ、オランダ、フランスを回ったヨーロッパツアーまでの彼らの姿を追う。

 物語は、ヨーロッパツアー最終日の翌日、7人がフランス・パリの小さなルーフトップテーブルに集まるところから始まる。ワイン片手にコース料理に舌鼓を打ちながら、これまでのツアーについて振り返る7人。映画はその“打ち上げ”風景と、各地でのライブステージ、ARMYと呼ばれるファンの熱気やその舞台裏を交互に挟みながら進んでいく。そこには、歯の浮くようなナレーションも、ドラマチックな演出もない。ステージという「光」の世界と、そこに向かうまでの「影」の世界を行ったり来たりする彼らの姿を、ありのまま、淡々と映し出すだけだ。


 映画の全編から漂うのは「愛」の香りだ。メンバーがメンバーに対して見せる愛、スタッフへの愛、BTSの分身とも言えるARMYたちに与える愛、反対にARMYたちから与えられる愛、そして「自分が自分に贈る愛」。さまざまな愛が、映画の端々に散らばっている。

「愛」は、BTSにとって、とても大切な言葉だ。特に今回のツアーは、「本当の愛は自分を愛することから始まる」という信念のもとに始まったアルバムシリーズ「LOVE YOURSELF」を引っさげて行われたものであることから、映画の前提に「愛」があるのは当たり前のこととも言える。

 映画を観て、「BTSの愛」について、再確認したことがある。それは、彼らの愛は、「人を救う」ということだ。

 劇中、長く過酷なツアー日程のせいもあり、彼らは度々思いもよらないハプニングやアクシデントに遭遇する。例えば、パリ公演。体調を崩したせいで思うように声が出ず、苦しむV。そんな彼を支えたのは、同い年のJIMINだった。この頃、JIMINはJIMINで大きな問題を抱えていた。にもかかわらず、初のフランスライブでベストなパフォーマンスを見せられないふがいなさに下を向くVの肩を抱き、笑い、ともに歌い、Vを暗闇から救い出す。

 ロンドン公演のリハーサルでけがをしたJUNG KOOKもまた、それぞれのメンバーがそれぞれの形で見せる愛に救われ、笑顔を取り戻していく。特に公演後のJINとJUNG KOOKのやりとりには、JINらしさがよく表れている。そんな彼らの姿は、自分たちの予想をはるかに超える大きなうねりを、手を取り合って乗り越える同志愛であふれている。

 映画にはARMYと交わし合う愛も、たっぷりと描かれている。7人は、常々「ARMYの愛のおかげで自分たちはここにいる」と言う。それはSNSを通じたARMYの発信力が、今の世界的人気の要因の一つとなっているということもあるだろう。だが何より、ARMYの声援により、つらい時にも自分たちが立ち上がることができるということを知っているからだ。ライブシーンにはどれも、割れんばかりのARMYの歓声が響き渡っている。時に声がかすれて歌えないVに向けて、時に椅子に座って歌うJUNG KOOKに向けて、「大丈夫だよ」「私たちがついているよ」と精いっぱいの声で叫ぶ。7人もARMYに想いを届けるべく、全力投球で歌って踊る。BTSとARMYの想いが交差するライブシーンは、愛の交歓にも見える。

 劇中、7人が一貫して見せるのは、「プロ意識」だ。

 例えばJUNG KOOKは、ソウルコンサートで自らが起こした一瞬のハプニングを許せず、2カ月たったパリ公演のあとにまで、悔しさをにじませる。いつもにこにこしているイメージの強いJ-HOPE(ジェイホープ)は、ライブをモニタリングしながら、普段テレビの前では見せない顔をのぞかせ、音楽面での“チームの要”SUGA(シュガ)は、「寝る時間すらない」と嘆きながらも、自らに課せられた仕事に打ち込む。その姿は「プロだから」という言葉では説明できないほどストイックだ。

 BTSはデビュー以来、全てのステージ、全ての曲に、一寸の妥協も許さず、一つ一つの動作に魂を込め、全力投球してきた。たとえ、満身創痍の状態だったとしても、だ。映画でもそんな“BTSの代名詞”と言えるパフォーマンスシーンがふんだんに登場する。7人がステージで歌って踊る姿は「まぶしい」の一言だ。だが、それまでの映像を見ていれば気づくはずだ。その輝きは決してスポットライトの光ではなく、彼らのひたむきさから生まれていることを。次のステージに立つまでの苦悩と努力、彼らの血と汗と涙の結晶だということを。

 プロフェッショナルな顔を見せる一方で、彼らは20代の青年らしい顔も覗かせる。

 特に印象的だったのは、「些細なこと」に幸せを感じる姿だ。異国のレストランで出された庶民的な韓国料理にテンションを爆上げし、オヤジギャグで盛り上がる。公園を散歩しながら「外の空気に当たると、生きた心地がする」とつぶやき、プライベートジェットに乗り込めば、平行まで倒れる椅子のリクライニングに声を上げて感動する。ワールドスターになった今も、彼らの幸せはそんな些細なことだったりする。裏を返せば、そんな普通のことが難しい環境だということだろう。彼らの無邪気な姿を観るとそれが少し不憫に感じたりもするが、「普通の感覚を忘れていない」姿にホッとしたりもする。

 これまで、誰も想像できなかった多くのことを成し遂げてきたBTS。彼らがなぜここまで世界で愛されるのか、今までのグループと何が違うのか。はっきりとはつかめないでいた。

 だが、それが今はわかるような気がする。その答えが、この映画にはある。

※AERA 2019年8月12・19日合併増大号

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