将棋の羽生善治さん(47)と囲碁の井山裕太さん(28)に2月13日、「国民栄誉賞」がおくられた。将棋や囲碁の業績での受賞は初めてで、注目を集めている。「国民栄誉賞」とはどんな賞なのだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞政治部・大久保貴裕さんの解説を紹介しよう。
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羽生さんは「竜王」「名人」など将棋界の七つのタイトルを一定の回数以上取ったことで、史上初の「永世七冠」を獲得した。井山さんは、囲碁界で初めて、2度目の七大タイトル独占を果たした。
このことを知った安倍晋三首相が、「国民に夢と感動を、社会に明るい希望と勇気を与えることに顕著な業績があった」と判断し、国民栄誉賞をおくることを決めた。
国民栄誉賞は1977年、プロ野球選手の王貞治さんが通算本塁打で世界記録を達成したとき、当時の福田赳夫首相が創設した。これまでに23人の個人と1団体が受賞。スポーツ選手や俳優、作曲家らが多い。
この賞は定期的におくられるものではなく、明確な基準があるわけでもない。その時々の首相が「この人はふさわしい」と考えたときに専門家らの意見を聞いたうえで決める。ただ、過去には、受賞候補者から辞退されることもあった。
「政権の人気取り」との指摘もある。2013年、野球の長嶋茂雄さんと松井秀喜さんがダブル受賞したとき、安倍内閣の支持率は前月より5ポイント上がり、過去最高に並んだ。支持率アップにつながるとは限らないが、安倍内閣での授与は今回を含めて6人となる。
受賞者に表彰状や盾とともにおくられる記念品も話題を呼ぶ。レスリングの伊調馨さんには金メダルをイメージした西陣織の帯、サッカー「なでしこジャパン」のメンバー全員には化粧筆がおくられた。(解説/朝日新聞政治部・大久保貴裕)
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