史上最年少、14歳のプロ棋士が誕生した。あの羽生善治三冠でさえも、プロ棋士になったのは中学3年のときだったという。いったいどんな人物なのか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞文化くらし報道部・村瀬信也さんの解説を紹介しよう。

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 将棋界に史上最年少のプロ棋士が誕生した。中学2年の藤井聡太さん。9月3日、棋士の卵たちが競い合う「奨励会」で好成績をあげ、10月1日付でプロの仲間入りを果たした。14歳2カ月でのプロ入りは、元名人の加藤一二三九段(76)の14歳7カ月を62年ぶりに更新する大記録だ。

 藤井さんは5歳ごろに祖母から将棋を教わり、メキメキと腕を上げた。

 終盤戦が得意で、相手の王将/玉将(いちばん強い駒)のつかまえ方を考える「詰将棋」を解く速さは有名だ。3月に行われる「詰将棋解答選手権」で、藤井さんは今年、並み居るプロを押しのけて2連覇した。

 愛知県瀬戸市に両親、兄と住み、名古屋市の名古屋大学教育学部付属中学校に通う。本人が「将棋しかやっていない」と語るほど「将棋漬け」の日々を送っており、テレビを見ることは少ないという。プロ入りが決まった後に情報番組に出演した際、「好きな芸能人」を問われて挙げたのは、最近バラエティー番組で“ひふみん”の愛称で活躍している大先輩、加藤九段の名前だった。

 将棋のプロ棋士になるのは大変難しい。奨励会には通常6級で入り、白星(勝ち)を重ねると1級から初段、さらに三段へと昇級、昇段できるが、最後に難関の「三段リーグ戦」を突破しなければならない。

 年に2度、半年かけて行うリーグ戦には、毎回、30人前後の三段が参加する。18局戦い、プロ棋士として認められる四段に昇段するのは原則上位2人、一年で4人だけだ。四段になるのは20歳前後の人が多く、26歳までになれないと、原則、奨励会を退会するというルールもある。

 藤井さんは昨年10月に三段になり、今年4月に始まった初参加のリーグでいきなり1位になった。初参加でリーグを突破したのは8人目の快挙だ。

 1996年に七つのタイトルを独占した羽生善治三冠(46)でも、プロ棋士になったのは中学3年のときだった。5人目の「中学生プロ棋士」になった藤井さんがこれからどんな活躍を見せるのか、多くの人が注目している。デビュー戦は12月か1月の予定だ。(解説/朝日新聞文化くらし報道部・村瀬信也)

※月刊ジュニアエラ 2016年12月号より

ジュニアエラ 2016年 12 月号 [雑誌]

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AERA dot.編集部
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