木村 公立か私立かの選択でいっても、10年前と比べ、発達障害の子の家で私立志望は徐々に減っているというのが現場の実感です。なぜなら公立校のほうが発達障害の支援ということでは手だてがありますから。教師の意識も変わってきています。「公立がうまくいかないから私立に」より、「公立のほうが多様性を見てくれるからいい」と考える保護者が増えてきているのが実際なんです。

安浪 そうなんですね!

木村 加えて、この4月から学習指導要領が新しくなりました。これまでは「望ましい人間関係を形成する」ということで、「仲よく助け合う」「協力し合う」「支え合う」など、発達の特性がある子たちには苦手な人間関係のあり方が目標とされていました。 それが新しい学習指導要領では、望ましい人間関係が消えて、「互いのよさや可能性を発揮しながら」に変わっています。多様な他者との協働とか合意形成をする力、自己実現の態度といったものが重視されるようになっている。現場での指導も「みんなと同じように」から「一人一人の強みをどう生かすか」に今後は大きくシフトしていくことになります。つまり公立の学校文化が変わっていくということですね。

田上 公立も今、少しずつ変わろうとしているんですね。小規模特認校というフリースクールの公立版のようなところもできていて、多様性に対応できる学びの場が出てきています。「みんな」でやってきた学校文化が、これからはスタートもゴールも変わって、学びのスピードも学びの方法も変わっていく可能性があるということですから、その子にとって最適な学びは何かになると、箱選びだけじゃないということになってくる。「公立がダメなら私立」と、二者択一で考えなくてよいということになっていくわけです。

木村 重要なのは学びのサイクルが回っているかどうか。ですから箱=学校をどこにするかではなく、学びのサイクルをどう回すかを考えてあげることが大切だと思うのです。どの箱で学ぶかは手段であって、見なければいけないのは、学びのサイクルが回っていて、子どもの成長が保障されているか。その視点で考えると、今はたくさんの方法が出てきているんですよ。

1 2 3 4 5