木村 子どもたちがそもそも抱えている困り感には、発達の“障害”に由来するものと、発達の“停滞”に由来するものの二つがあります。注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群(ASD)、学習障害(LD)の子たちは、発達の“障害”に由来するものですね。一方の発達の“停滞”は、乳幼児期に体をしっかり動かしてこなかったことで、姿勢維持ができない、鉛筆をもっていないほうの手が下がりっぱなしになるなど、脳と体の連動がうまくいっていないケースです。こうした発達停滞組の存在が指摘されてきていて、「停滞由来」の子たちまで含めて、発達障害が増えているといわれているんです。

安浪 そうなんですか!

木村 「障害由来」と「停滞由来」ではリカバリーの仕方も違ってきます。「障害由来」の子たちは、それぞれの特性に合わせて電子ツールを使ったり、聴覚や視覚を使ったり、教える手だてがいろいろあるのですが、「停滞由来」の子たちはそれでは対応できないんです。基礎工事からやり直してあげないといけません。

安浪 発達の停滞と発達障害は対応の方法が違うということですか?

木村 私が言っている発達の停滞は、発達障害とは別枠です。小さいころの外遊びや運動体験の不足で身体から入る脳への刺激が少なく、左右の脳の連動がうまくいかなくなっている子たちです。左の脳で言葉を捉えて、右の脳で映像にするといったことができにくくなっているということですね。左右の脳の連動をつくるベースは、幼児期にどれだけ体を動かしたかなのですが、そこが足りていないと、外からの情報をきちっと捉える体になっていきません。その状態で小学校の記号・数字・言葉の学びの世界に入ったとき、体を通じて理解するといったことが難しいんです。すると小学3年生ぐらいからパターン学習と暗記学習にシフトしていってしまい、考えることがどんどん苦手になっていくんですね。

安浪 抽象概念が入ってくると、そこでついていけなくなってしまう。

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