今年の3月までAERA dot.で「61歳の新入社員 元校長のプログラミング教育奮闘記」を連載をしていた元公立小学校の校長の福田晴一さん。コロナ禍で大打撃を受けた教育現場の現状をぜひ知ってほしいと、先生を救うために、今、保護者にできることを緊急寄稿してくれた。

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 学校が休校になってから、昔の校長仲間とZOOMでよく連絡をとるようになった。

 私は今、NPO法人「みんなのコード」に在籍して教師向けのプログラミング講師をやっている。オンライン授業に多少明るいことで、その情報交換がメインだったのだが、その場ではよく「学校再開後」の話題になった。校長たちは口をそろえて「再開しました、よかったね」とは単純にいかないだろうと言っていたが、通常登校となった今、かつての想像以上に過酷な状況になっている。 

 まず、先生たちは毎日消毒作業に追われ、膨大な時間を費やしている。「絶対に感染者を出してはいけない」という責任感のもと、子どもたちの安全確保・健康管理が重くのしかかる。子どもたちの心のケアも重要だ。コロナ感染への不安や、進級に伴う友達関係の不安、崩れた生活からくる体調不良など、子供たちは今までにない見えない不安を無意識に抱えているからだ。

 それらに注力した上で、現場の先生たちは「明日の授業をどうしよう」と考えている。「授業日数の確保、行事の精選、夏休みの短縮」と言った教育課程の再編成もある。先生方は、まさに忙殺の日々が続いているのだ。

 仕方ない部分もあるとはいえ、先生方も人間だ。このような状況が続くと「医療崩壊」ならぬ「学校崩壊・教育崩壊」を招くのではないかと、私は強い危機感抱いている。

 今、先生方が追い詰められて「教育崩壊」になってしまえば、そのしわ寄せは子どもたちにきてしまう。

 そこで、私から保護者の皆さんに3つの提言をしてみたい。

1 学校へのクレームを控えて、先生方にエールを

 私の40年の教員経験からいうと、最も心労、ストレスがたまるのが保護者対応だ。はっきり言えば、「取るに足らないクレームを学校に寄せて、先生の仕事を増やさないでください」ということだ。もちろん、学校に何も言うな、ということではない。今、先生たちは保護者の言い方ひとつ、表情ひとつに敏感になっている。何かお願いがあるなら、「いつもありがとうございます」と一言付け加えるだけでぐっと印象は変わってくる。

 4月の非常事態宣言時、「医療従事者をリスペクトしましょう」というフレーズをよく耳にした。今の状況では、「医療従事者」同様に「教育従事者」へのリスペクトが必要だと感じる。つまり、保護者・地域による、学校への後押しや先生方へのエールだ。先生たちが最も元気づけられるのは、保護者・地域からのねぎらいの言葉だということをぜひ知ってほしい。

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AERA編集部
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