長い歴史の中で、人類はさまざまな感染症に襲われ、闘ってきた。小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」8月号では「感染症の歴史から学ぶ 新型コロナとのつきあい方」を特集。感染症との歴史について、日本を中心に振り返った。
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感染症とは、目に見えない細菌やウイルスなどが体内に入って引き起こされる病気で、人間の歴史に大きな影響を及ぼしている。
人間が文明を発達させる過程で、もともと自然界にいた細菌やウイルスが人間の社会に入り込んだ。また、人口が増え、より遠くまで移動できるようになったことで、人から人へうつる機会も増え、さらに広まった。
日本には、大陸から稲作などの文化がもたらされた。このとき、人やモノと一緒にさまざまな感染症も伝わった。その後も、仏教の伝来や、中国やヨーロッパの国々との貿易などの交流を通じて、多くの感染症が日本にもたらされた。さらに、いわゆる「鎖国」政策で海外との交流が制限された江戸時代にも、すでに日本に定着していた感染症が何度も流行した。
感染症の病原体は目に見えないほど小さいため、昔の人々には原因がわからなかった。奈良時代、大仏を造立したのは、大流行していた天然痘のおはらいのためでもあった。
ただし、感染者が出たら、近づかないほうがよいとは知られていたようだ。こうした知恵は次第に蓄積され、庶民の関心も高く、江戸時代には健康本がベストセラーになっている。
●縄文時代~古墳時代
縄文時代の貝塚の糞石(糞の化石)からは寄生虫が見つかっている。農業が始まると、糞を肥料に利用したことで、寄生虫による感染症はさらに拡大した。野生の犬や牛の間での感染症が、これらを家畜として利用することで人間にも広まった。ポリオにかかって手足が不自由になった人骨も発見されている。
朝鮮半島から渡来人がやってきて、稲作や鉄などの文化がもたらされたとき、結核などの感染症の病原体も同時に運ばれてきた。稲作のための水田は、マラリアなどの感染症の病原体を運ぶ蚊の温床になった。弥生時代や古墳時代の墓からは、結核の痕跡のある人骨が発見されている。
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