2.「負けました」と言って終わる

自分の負けを悟ったら、「負けました」という宣言「投了(とうりょう)」をしないと対局は終わらない。負けを認めるのは悔しいが、声に出す勇気を振り絞って潔く言うことで、悔しさを折りたたんで心の中にしまうことができ、気持ちを切り替えられる。

3.感想戦をして、ゲームを振り返る

対局の後、勝者と敗者が一緒に内容を振り返る「感想戦」があるのも将棋の特徴。敗者は敗因に気づくだけでなく、お互いが「相手はどんなことを考えていたか」がわかるので、さらに良い手を考えるきっかけとなり、意欲的になれる。

 将棋の駒はそれぞれ動き方が決まっていて、しかも相手の陣地に入ると裏返り、これまでと違う動きができる駒もあります。そんな駒の個性を上手に使って、自分の好きな駒に期待をかけ、自分の得意技で勝負に出るのも将棋の楽しいところでしょう。

「ルールがあるなかで、“次はここに指せばこうなって……いや、相手がここを指したらまずいな……”などと多方面から考えに考えるので、自然と論理的思考力が育ちます」と安次嶺さんは言います。

 また将棋は、敗者が「負けました」と宣言しなければ対局が終わらないというのも特徴。

「 “負けを受け入れる”ことで、自分の判断で駒を動かした責任を実感し、自分の弱さを謙虚に認める姿勢をもてるようになります。失敗や挫折を乗り越えるチャンスですね」

 さらに「今の子どもたちは、失敗を極度に恐れる風潮があります。だからこそ“負けてもいいんだ”と、将棋で失敗に慣れるのは、意味があると思います」と話します。

 勝った子も喜んで大声を出したりはしません。「次も勝てるかわからない」ことを知っているし、負けた側の気持ちもわかるからです。対局後に敗因、勝因を冷静に分析、反省して「ありがとうございました」と相手に感謝の言葉を送るのが将棋のマナーです。礼儀作法だけでなく、相手を思いやる気持ちも育てます。

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