激化する米中対立。貿易戦争からはじまった大国同士の対立は、TikTokを巡る対立や総領事館を閉鎖し合う争いなど、深刻化を増している。この対立の行方について、小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」10月号で専門記者が解説した。

中国の習近平国家主席(写真/朝日新聞社)
中国の習近平国家主席(写真/朝日新聞社)

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 アメリカと中国との対立が深まっている。トランプ米大統領は8月中旬、人気の動画アプリ「TikTok」を運営する中国企業に対し、TikTokの米国事業を90日以内に売却するよう命じた。米国では毎日約5千人がTikTokを使っているとされる。

 米ホワイトハウスは、「(中国のアプリが)利用者から多くの情報を吸い上げ、中国共産党に情報が渡る恐れがある」と説明。安全保障上の脅威だと主張している。

 これは米中対立の一コマに過ぎない。7月には相手国の総領事館を閉鎖しあうなど、お互いの不信は強まる一方だ。

 どうしてこうなったのか。現在の米中対立は、貿易問題から始まった。2018年、トランプ政権は中国による巨額の対米黒字を減らすため、米国に輸出する中国製品の関税を大幅に上げる制裁を発動した。中国政府はそれ以前よりあった、米企業から知的財産を盗んでもうけているという問題について、解決すると約束していた。しかしその後も根本的な解決策を示さなかったため、米政権から追加の関税をかけられた。

 さらに、政治面での不信も深まった。米国の歴代政権は、中国が経済発展をして豊かになれば民主化が進むと考えてきた。しかし、中国の習近平政権は、逆にメディアや学者への締め付けを強めた。自由が保障されているはずの香港では国家安全維持法を成立させ、中国に批判的な人たちを警察が次々と逮捕するなど、民主化と逆行する政策を進めた。

 こうしたことから、米政権はこれまでの対中政策は「失敗」と総括した。ポンペオ米国務長官は、政府への批判を許さない習近平国家主席を「全体主義者」と非難し、民主主義国家と全体主義国家は相いれないという根本的な国としての思想の対立を明確にした。

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奥寺淳
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