■ほかの進学校とは「ひと味違う」大学合格実績
JR中央線の下り線、西荻窪駅を過ぎると、車窓から教会と見まがうようなレンガ造りの塔がちらりとみえる。「真理」という意味のラテン語「VERITAS」の文字が刻まれているこの塔は、吉祥寺にある中高一貫校、吉祥女子中学・高等学校の1号館のシンボルタワーだ。
吉祥女子は東京の難関女子進学校のひとつであり、大手進学塾の模擬試験で活用される、いわゆる「偏差値一覧表」に目を向けると、洗足学園、白百合学園、頌栄女子学院、鴎友学園女子などとほぼ同じような位置にある。
吉祥女子の起源は1938年、新宿区に設立された帝国第一高等女学校。創立者は地理学の権威であり、「帝国書院」を立ち上げた守屋荒美雄氏である。戦後すぐに同校は武蔵野市吉祥寺東町に移転し、その名を吉祥女子に変更した。校名を「吉祥寺女子」にしなかったのは、「寺」をつけることで仏教系の学校という先入観を持たれたくなかったからだとか。
2020年の同校の大学合格実績に目を向けてみよう。東京大学4人(うち現役3人)、早稲田大学88人(同73人)、慶應義塾大学58人(同48人)、上智大学42人(同38人)など、難関大学の合格者が数多く輩出していることが分かる。
しかし、他の女子進学校と比較して「ひと味違う」合格実績がある。
多摩美術大学11人(同11人)、武蔵野美術大学23人(同23人)……。そう、芸術系大学の合格者が多いのだ。
実はこの吉祥女子、かつては「芸術コース」を設けていた学校である。このコースは完全中高一貫体制になった2007年に廃止されたが、いまもなお同校は「高度な技術の習得と創造性を学ぶ」という方針のもと、芸術教育に力を入れている。
■声楽、バレエ、日本舞踊…多彩な課外授業講座
吉祥女子は完全中高一貫教育をおこなっていて、高校2年生のとき進路別に“系”の編成がなされるという。同校の広報部部長・杉野荘介先生は説明する。
「本校では高校2年から文系、理系、そして芸術系(音楽・美術)に分かれて学びます。言い換えれば、高校1年の秋までは自らの進路について、芸術系も含めてじっくりと考えることができます」
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