核兵器は、人として守るべき道に合わず、違法だ─―。こう定めた初めての国際条約である核兵器禁止条約が、2021年1月22日から効力を持つことになった。世界の50カ国・地域が条約に同意する手続きの「批准」をしたためだ。小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」1月号は、この核兵器禁止条約について解説した。
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世界にはいま、約1万4千発の核兵器がある。そのうちの約9割が、アメリカとロシアのものだ。アメリカは1945年7月に初めて核実験を行い、同年8月に、広島と長崎に原爆を投下した。現在の核兵器はその1千倍以上の威力があるとされる。使い方次第では、人類を絶滅させることもできる。
核兵器禁止条約が画期的なのは、核兵器について、「すべてなくすことこそが、二度と使われないことを保証する唯一の方法だ」とうたい、核兵器のあらゆる開発や実験、生産、保有、使用を禁じたことだ。
これまでも核兵器は、野放しだったわけではない。70年に発効した核不拡散条約(NPT)は、世界の191カ国・地域が加盟し、核兵器が世界に広がらないようにする歯止めの役割を担ってきた。
ただ、NPTは核兵器を違法とはしていない。60年代までに核兵器を手にした米ロ英仏中の5カ国には保有を認め、それ以外の国には保有を禁じるという内容だ。核を減らすための軍縮交渉を義務づけてはいるが、実際には核はなかなか減らず、核を持たない国から「不平等だ」という批判が上がっていた。また、NPTではインドやパキスタン、イスラエル、北朝鮮が核を持つことも防げなかった。
一方、核兵器禁止条約は発想が異なり、核兵器を全面的に禁止する。「核兵器の保有をちらつかせることで、相手に攻撃を思いとどまらせる」という「核抑止」についても威嚇(脅し)にあたるとして禁じている。
●アメリカなどの核保有国や「核の傘」に依存する日本は未署名
しかし、これで核兵器廃絶が大きく進むかといえば、そう単純ではない。
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