4月27日。世界中が板門店(パンムンジョム)に注目した。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と、韓国の文在寅大統領が歴史的な握手をしたからだ。北朝鮮の思惑は何なのだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞ソウル支局・武田肇さんの解説を紹介しよう。
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4月27日午前9時半、韓国と北朝鮮の境界に位置する板門店に、世界の注目が集まった。北朝鮮の最高指導者、金正恩朝鮮労働党委員長が、韓国の文在寅大統領と会談をするため、韓国側を訪れたからだ。金氏が文氏に笑顔で歩み寄り、握手を交わす瞬間は世界に生中継された。北朝鮮指導者の訪韓は、朝鮮戦争(1950~53年)後、初めてのことだ。
会談終了後、文氏と金氏は「長年の分断と対決を一日も早く終わらせる」「朝鮮半島から核をなくす」とした板門店宣言を発表した。韓国で金氏は「冷酷な独裁者」というイメージで見られていたが、会談後の世論調査では8割近くが信頼できると答えるなど、劇的に好感度がアップした。
宣言に明記されたように朝鮮半島の人たちは同じ民族でありながら二つの国に分かれ、対立してきた。第2次世界大戦の終結で日本の支配から独立した後、南は資本主義のアメリカ、北は社会主義のソ連(現在のロシアなど)に占領され、体制の違う別の国家が成立したからだ。
とりわけ2011年に北朝鮮の3代目の指導者になった金氏は、自国を敵視するアメリカに攻め込まれるとして核・ミサイル開発を加速させ、軍事的な緊張が高まっていた。さらには金氏は、最近まで「ちんぴら」とまで批判していたアメリカのトランプ大統領と6月12日、シンガポールで初の会談を行った。★少し手を入れています★
金氏が急に韓国やアメリカと対話を始めた理由は明らかではない。核兵器を隠し持ちながら経済制裁を緩めさせる偽装工作ではという疑いも消えていない。金氏の真の目的は何か、朝鮮半島に本当に平和が訪れるかどうか、すべては金氏とトランプ氏の、今後の交渉にゆだねられた格好だ。★少し手を入れています★(解説/朝日新聞ソウル支局・武田肇)
【キーワード:朝鮮戦争】
北朝鮮と韓国の戦争。米ソの対立とからんで、朝鮮半島に2つの国ができた問題が1950年に武力衝突に発展。北朝鮮は中国が支え、韓国はアメリカなどが支援した。激戦の末、53年に「休戦」協定が結ばれた。今回の板門店宣言では「休戦」状態の朝鮮戦争を終わらせ、平和を築くという目標が盛り込まれた。
※月刊ジュニアエラ 2018年7月号より