日本の建築技術が「無形文化遺産」に登録されることが決まった。これまでに、歌舞伎や和食も登録されている。今回登録される日本の建築技術とはどんなものだろうか。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」2月号の記事を紹介する。

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 古い木造建造物を修理して守る日本の建築技術が、昨年12月17日にオンラインで開かれたユネスコ(国連教育科学文化機関)の委員会で、「無形文化遺産」の仲間入りをすることが決まった。

「無形文化遺産」とは、人から人へと伝えられる、形がない「生きた文化」のことだ。ユネスコはその保護のため、世界の祭礼行事や芸能、社会的な慣習などを登録している。

 文化庁によると、ユネスコの無形文化遺産は「みんな違ってみんないい」という考え方で、世界の文化の多様性を示すことも大きな目的だという。日本からはこれまで、「歌舞伎」や「和食」など21件が登録されている。今回は、北アフリカの伝統料理クスクス(アルジェリアやモロッコなど4カ国で申請)や、機械式時計づくりの職人技(スイスとフランス)など29件が登録され、全部で492件になった。

 日本から登録された提案は、「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」というものだ。法隆寺(奈良県)などの歴史的な木造建造物を適切に修理し、守るために欠かせない17の技術を盛り込んだ。例えば、「茅」という草で屋根を覆う「茅葺」や、畳や建具の製作、紙や絹などに描かれた絵の修理などだ。

 国はこうした技術を「選定保存技術」として認定し、技術を受け継ぐ人や団体を支援してきた。今回の提案では、職人が技術を受け継いで高度に発展させてきただけでなく、修理に必要な漆などの天然資源を守ることに心を配り、採取する知恵も受け継がれているとしている。

 ユネスコの委員会は提案について、修理現場で違う技術を持つ職人たちが協力したり、地元住民にも参加してもらったりすることから、「協力と社会の一体性を促進し、日本人の文化的アイデンティティーを強化するという社会的機能を持つ」とも評価した。

 登録で幅広い人から注目され、現場の職人も含めた関係者の誇りや、やる気にもつながることが期待される。

●深刻な後継者不足 若い世代に期待

 職人たちの悩みは、後継者不足だ。「伝統建築工匠の会」(東京都)によれば、歴史的建造物の修理だけでは収入が足りず、木造の一般家屋などに関わる仕事もしている人が少なくないという。ただ伝統的な日本家屋は減り、そうした仕事も減りつつある。同会では今回の登録が、安定して働ける環境づくりや職人の地位向上につながり、技術を身につけ働きたいと思う若者が増えていくことを願っている。

(朝日新聞文化くらし報道部・丸山ひかり)

※月刊ジュニアエラ 2021年2月号より

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丸山ひかり
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