【解説】


 お答えします。

 安定した職業に就いてほしいと思う親の気持ちは、よく分かります。私自身、大学4年生になる息子を持っていますが、将来、どうやって口に糊するかと考えると「公務員採用試験でも受けてみたら」と言いたくなります。採用試験の勉強なんかしていないので、十分な点数がとれるはずもないのですが。

 ところで、孔子は、「或(あるひと)」から、「子奚(なん)ぞ政を為さざる(先生はなぜ、政治に関与されないのですか?)」と質問を受けます。

 孔子は、人が生きる上で最も重要な本質を突いて答えます。

「書に云わく、孝なる乎、惟れ孝、兄弟に友なり、政有るに施すと」(為政第二)

「書」とは、現在『書経』とか『尚書』と呼ばれる古代中国の歴史書で、孔子によって編纂されたものといわれています。理想の国家がなぜ崩壊していくのか、再び理想の国家をつくるためにはどうすればいいのかが書かれている本なのですが、その中に、この言葉が書かれています。

「親に孝であること、きょうだいに友であること」

 これは「自分の父母にあたる世代の人への労いと感謝の気持ちを抱いて接すること、また自分と同世代の人々と互いに助け合うようにすること、これこそが政治への寄与である。わざわざ政治家になる必要なんかない」という意味です。

 まず、どんな職業に就くとしても、この基本を忘れてはいけないでしょう。人は一人では生きていけません。生きるためには「孝」と「友」を忘れないようにすることが大事なのです。
 
 さて、親の世代にはなかった「YouTuber」という職業について考えてみます。相談者さんの11歳のお子さんが仕事をする年齢になった時に、それが「職業」として残っているかどうか……それさえも分からないほど、今の世の中は大きく変化しています。大切なのは、「変化の波にさらわれすぎず、かつその波に乗れなくなってしまうこともない」ということではないかと思います。そのためには、「常に学び続けること」が必要になります。

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