――オリンピックでは悲しい出来事もいろいろ起きたよね。ボイコットで出場できなかった選手がかわいそう。オリンピックに政治を持ち込まないでほしいわ。

 気持ちはわかるけど、難しい問題でもあるんだ。昨年、テニスの大坂なおみ選手が人種差別に抗議するマスクをつけていたのをどう思った?

――素敵だと思ったわ! 勇気がいることだし、人種差別はいけないことだもの!

 でも、もしもオリンピックで大坂選手が同じことをしたら、罰せられるかもしれない。オリンピックでは政治的な行為は禁止されているからね。過去に人種差別に抗議したアメリカの選手は大会から追放されたでしょ? でも、それで本当にいいのかな。日本ではルールを「守る」ことがスポーツマンシップだと考える人が多い。でも、本当はルールを「つくる」ことこそがスポーツマンシップなんじゃないかな。スポーツは、殴り合いや取っ組み合い、球の奪い合いのルールをみんなで話し合って考えることで生まれたものなんだし、オリンピックは、敵対していた国同士が話し合って、「戦争をやめて大会を開こう」とルールを決めることで生まれたものなんだから。

――なるほど!

 東京大会を開くかどうかも、政治家だけで決めるのではなく、選手自身や国民の意見をもっと聞くべきだったと僕は思う。今回の大会誘致のとき、福島第一原発事故の影響を心配する意見に対し、当時の安倍晋三首相が「アンダーコントロール(制御下にある)」と発言した。事実と違うのではといわれたけど、誘致が成功したから黙殺された。そんな経緯があるから、新型コロナウイルスの流行が収まらない今、「中止すべき」という声も黙殺されているように疑問を持たれてしまう。もしも、開催して大会が盛り上がって終わったとしても、「ほら、中止すべきではなかったでしょう?」と終わらせてはいけない。なぜ、開催すべきと考えたのか議論してこそ、次につながるよね。

 そして、ぜひ、選手も観客も、いろいろな人が知恵を出し合って、これからのオリンピックをどうすべきかを話し合ってほしい。コビンとコビンナ、何かいい案はない?

――陸上はこの国、水泳はこの国、サッカーやバレーなどの球技はこの国と、開催地をいくつかに分けたらどうかな?

 なるほど! 一つひとつの規模が小さくなれば、大会を開きやすくなるかもしれないね。
クを一緒にやったらどうかしら? 走り高跳びで、オリンピックの選手が跳んだすぐ後に、パラリンピックの片足の選手が跳ぶとか。

 それもいいね! みんなで知恵を出し合ったら、もっとワクワクする大会になる。ぜひ、みんなの意見も聞かせてね!

※月刊ジュニアエラ 2021年7月号より

ジュニアエラ 2021年 07 月号 [雑誌]

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AERA編集部
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