さて、まず、相談者さんが持つべき心構えを、『論語』の教えによってお伝えしましょう。

「己(おのれ)を脩めて以(も)って 百姓(ひゃくせい)を安(やす)んず」(憲問第十四)

 弟子の子路から「どうしたら君子になれますか」と聞かれ、答えた孔子の言葉で、「己のことは常にしっかりと磨き、周りの人たちを安心させるのが君子というものだ」という意味です。

「脩」という漢字は、人が身なりを整えるように、心も体もシャキッとさせることを表します。つまり、さまざまな苦労や悩みがあってもそれを水に流して、日々心を磨いてピカピカにしておくことです。

「安」は、「女」と「宀(家)」で作られた漢字で、「女性が安心して家の中で、家事や育児をしていること」を意味します。相談者さんが、今、やらなければならないことは、自分自身を磨いて、妻と息子さんを安心して暮らせるようにしてあげることなのです。

 そのために、相談者さんが具体的にすべきことは、まず、妻をねぎらうことです。自分の子どもを産んでくれた妻に感謝し、日ごろの苦労に心から「ありがとう」と言いましょう。息子さんは必ず、「母親を大切にしている父親」をしっかり見ています。息子さんは父親をお手本にして、優しさや他者への思いやりを学びます。相談者さんは手本を見せることでしか、子どもに父親の威厳をアピールすることはできないでしょう。

 そして、月に一度会った際には、息子さんの日々の悩みに真摯に耳を傾けましょう。学校の話、友達の話など、妻と息子さんが2人で暮らす中で直面する問題や心配、喜びを一緒に分かち合い、安心させてあげましょう。

 息子さんの気持ちは他人がコントロールできませんから、相談者さんは、「息子から尊敬されるかどうか」などと考える必要はありません。

 孔子はこうも言います。「父父たり。子子たり」(顔淵第十二)

 これは、「父親は父親らしくありなさい、子どもは子どもらしくありなさい」とその名にふさわしい言動をするようにという有名な教えです。「父親が父親としての務めを果たせば、子は子としてやるべきことをきちんとやるから、家も国も安泰になる」と孔子は考えたのです。

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