受験者数・受験率ともに8年連続での上昇となった今年の中学入試。コロナ禍で2年目の入試でしたが、英語科目の本格導入、陽性者・濃厚接触者を想定した追試の設定など、例年にはない動きがありました。
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今年は江戸川学園取手(茨城県取手市)が、すべての入試回に英語を導入したことで注目された。サピックス教育情報センター本部長の広野雅明さんは、英語入試について次のように話す。
「同校はこれまでも入試の選択科目の一つとして英語を導入していましたが、帰国生など英語の実力の高い受験生に向けたテストで、受験者層が限られていました。高度な英語力を持つ受験生にとっては、合格するチャンスを広げる役割も担っていた。それが今回は受験生全員に英語を課す、新しい入試が始まったと言えます」
ただし入試問題は小学5~6年で習う内容に準じており、難易度はそれほど高くなかったようだ。入試回や志望コースによって若干の差はあるが、受験生全体の平均は50点満点中約44点で、合格者の平均点も約45点で差がつかなかったという。
■英語を導入する学校は公立や国立にも
ほかにも公立中高一貫校の千葉市立稲毛国際や、さいたま市立大宮国際が適性検査に英語を課したり、国立の筑波大学附属(東京都文京区)が小学校の英語の成績も報告書の点数に加えたりするなど、英語を選抜の対象とする学校が増えている。ただし広野さんは、英語入試が本格化するのは「まだ先では」と言う。
「英語は家庭環境によって差が開きやすい教科で、入試に加えると英語だけで勝負がついてしまうことも考えられます。中学校は、英語だけができる子ではなく、その学校で大きく伸びる子を入学させたいと思っています。この動きが急に広がることはないでしょうが、試験を課した学校からの『小学校の英語もきちんと学びましょう』というメッセージは伝わったと思います」
ここ2~3年増えていた、自己アピール力や思考力などを見る「新タイプ入試」の実施校数は、152校から150校へとわずかに減少した。首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成さんは、その理由を次のように話す。
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