しかし、Tちゃんは違いました。全く諦める様子もなく、わからない問題が多くても、自分なりに解読して問題を解くコツを掴んでいくのが楽しそうだったと言います。この姿勢は、まさに山村留学で「できない」ことよりも「できる」ことをたくさん体験させてもらった賜物だったとお母さんは言います。普段から「行動しない人は、ここでは信用されないんだよ」と言っていたTちゃん。その言葉通り、やると決めたからには最後まで完走しようという意気込みを両親は感じました。

一番の収穫は、「自分を信じ、他人を信じる力」

 お母さんは、よく人から「山村留学して、何がよかった?」「中学受験に活かされたことは?」と聞かれるそう。

「特異な体験をしたことが売りになるとか、親元を離れていたから自立心がついた、とかそういったことを想像される人が多いようですが、私が一番感じたことは、娘が自分の力を信じ、他人を信じることができるようになったことです。自分を信じることで、惜しみなく努力もできるし、もし結果が伴わなかったとしても自分自身を否定せずに済みます。また、周囲の友だちや先生を信じることで、強い絆が生まれ、それは結果的に彼女自身を成長させていくことに繋がっています」と実感していると言います。

 受験までの短い期間を全力で駆け抜けたTちゃんは、見事、希望の中学に合格し、中学2年生になった現在は、校内のグループワークに積極的に参加して、友だちと楽しく中学生活を送っているそう。山村生活で先輩に教えてもらったウクレレやギターを弾きながら歌うTちゃんの姿を見ながら「親が何かを教えなくても子どもは勝手に学んでいく、余計な手出しをせずに見守ることが子どもを伸ばす最適解なのかもしれない」と教えてくれました。

(取材・文/鶴島よしみ)

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