福岡に移住したばかりのときもそうでした。たまの電話なのに、ちょっとした一言にカチンとしてしまって。そういうことの積み重ねだったのです。
――いっぱいいっぱいだったのですね。
そうですね。振り返ってみればちょうどそのころ、更年期の症状も出始めていたのかなと……。なんだか心のコントロールがうまくできない。そこに母の一言がドーンときて、私の怒りがドカーンとなる(笑)……といった状態でした。
娘との親子げんかが、私と母の親子げんかにそっくり!
――疎遠になっている間、お母さまのことは気になりませんでしたか。
今思えば「なんで私、あんなことで怒ったんだろう」と思うのですが、そのときは、母娘の関係を考えている余裕もないくらい調子が悪くなっていたので「もう、今はしょうがない」と割り切っていました。
でも、母は私の性格を熟知しているので、察して放っておいてくれたのです。私も「このままではいけないな……」と考えることはありました。でも、もともとこまめに連絡するタイプではなかったこともあり、思いのほか長く空いてしまったのです。
――大人になってから、母親との関係に悩む女性も多いようです。
家族の関係って、本当にいろいろですよね。私と母も今は仲よくなれましたが、そうはならない関係ももちろんあると思います。そんなとき、もし私だったら……もう割り切って、「お母さんの人生じゃない。私の人生だから」という考え方をするかもしれません。
今、どうやら私の更年期と娘の思春期がかぶっているようです。お互いイライラして、親子げんかになるともう大変(笑)。しかも、私と自分の母がしていたような親子げんかにそっくりなんです。同じようなことが原因で口論になっている。先輩ママ友に「裕ちゃん、そんなものだよ」と励ましてもらっています。母と娘、こういうときは「あ、これはもう仕方ない」と思って開き直らないとやっていられません。
でも、私と母が電話で話していると、あとから娘に「お母さんが電話でおばあちゃんと話しているのを聞いていると、とても楽しそう」と言われます。そう言われると「ああ、私はやっぱり母が好きなんだな」と思うのです。年齢を重ねて、私も落ち着いたのかもしれませんね。今の関係がとても心地よく、いちばんいい状態に感じるのです。
(取材・文/三宅智佳)
