おすすめポイント

 コーラ姫がちょっとくだらない質問をしてみると「ひめがふざけるとはなにごとでしょう」とおきさきさまに言われます。王さまになわとびはいやだと言うと「ひめともあろうものが、それでよいのか」と言われます。言い返すこともできないコーラ姫は悲しそう。王さまが金時計を片手に「はやく、もっとはやく!」とひたすら繰り返す場面はユーモラスですが、子どものいいところより足りないところばかり見て心配する親の姿だととらえると、何だかリアルで切ないです。

『おひめさまになったワニ』(ローラ・エイミー・シュリッツ 作/ブライアン・フロッカ 絵/中野怜奈 訳/福音館書店 刊)

 ワニがやってきてからは、そのハチャメチャぶりがとにかく痛快。ドレスを着てかつらをかぶったワニに「おれがかわりになるから、ひめは外でじゆうにあそんできなよ」と言ってもらって、外に飛び出す姫。お城で留守番のワニは、姫のようにいい子にするどころか、やりたい放題。奔放なワニのふざけたセリフにワクワクします。

 一方、姫はやってみたかった木のぼり、秘密基地、水の中を歩くことに夢中……。ちょっとくらい汚いものを踏んだって平気です。ひとつずつ経験するたびに、姫はたくましく、ぎゅっとしかめられていた眉も開き、満ち足りた顔になっていきます。お城に帰ったあと、ワニがしでかしたことの後始末をし、ドキドキしながらも大人たちに「もとどおりの生活なんて、いや。わたしの話をきいて!」と交渉するところがかっこいいです。

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