また、書き間違いの修正が非常にトリッキーです。万年筆の修正には、「インクキラー」(原語は「ティンテンキラー」)という専用のペンを使います。このペンは両端にそれぞれ白と青のペン先があり、白い方で間違った部分をなぞると、インクを化学的に分解する液体によって文字が消えます。修正液と違って、ノートの罫線が消えないのが特徴です。


この消した部分にはインクを透明化する液体が残っていて、上から万年筆で書くと文字が消えてしまいますので、インクキラーペンの青いペン先で正しい文字を記入します。2度目に間違ってしまった場合には、インクキラーペンでは消せないので、日本にもある修正テープや修正ペンを使うことになります。そのため、筆箱には、万年筆とインクキラーペン、修正テープか修正ペンの3種類を常備している必要があるほか、カートリッジも何個か入っているので、万年筆グッズだけでも場所を取ります。
「万年筆を学校で使うのは手間だし、時代遅れではないか?」という議論ももちろんあります。しかし、筆圧で線の太さが変えられるため、ボールペンより手への負担が少なく、筆記体が書きやすいこと、そして、一発書きで間違いなく書こうとする心理が働くため、集中力が高まるという利点もあり、万年筆のメリットも多いようです。
中学生になると、万年筆かボールペンか自由に選ぶことができるようになりますが、テストでは変わらず鉛筆禁止です。最近では日本の筆記用具も人気ですが、万年筆のインクのイメージが強いので、黒ではなく青ペンを使うのが主流です。
ウィーンの小学校で使われるランドセルや文房具をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか? 日本と似ている点や、全く異なる点もあり、意外に思われることもあったかもしれません。文房具の文化は、その国独自の価値観や歴史が色濃く残っている部分でもあり、深掘りしてみると、教育に関する新しい考え方に触れるチャンスでもあります。
ウィーンで子育てしていく中で、日本とは異なる教育事情や習慣に驚くことばかりで、価値観をアップデートしていく日々です。そんな私の気づきや、子どもたちを通して知る目からウロコの発見を、皆さんともシェアしていけたらと思います。