お風呂や宿題、やらなくてはいけないこともわかっているし、ひとりでできるのに行動に移せないのが、思春期の前段階にあたる「プレ思春期」。個人差はありますが、小学4年生くらいからからだの成長も急激に進み、子どもたちの心にも大きな変化があらわれ始めます。この時期の親子に多く見られる心配やお悩みについて、臨床心理士・公認心理師の松丸未来さんにお話しを聞きました。

まだまだ認知機能が未熟なこの時期。「おうちモード」もよしとしましょう!

<プレ思春期・親の心配>

「ひと通りのことは自分でできる小4。でも、宿題やお風呂などなかなか動かず、親が注意するとうざそうな態度を見せます。そのくせ、自分からまったく行動しようとしません。これはどういう心理状態なのでしょう」(小4女子の母)

――「お風呂に入りなさい」というと「あとで入る」といいながら、ずっと入らない……。見ていてイライラしてしまうのですが。

 まず、脳の発達がまだじゅうぶんに追いつけていないという面があります。「計画を立てる」「やりたいことを我慢してやらないといけないことをする」ブレーキの力がまだまだ未熟です。「じゃあここでゲームをやめて宿題をやろう」といった、「がまん」の力が弱いのです。

 また、「これをやったらどうなるか」という見通す力もまだまだ弱い。大人は、たとえば仕事でミスがあった場合「ミスが小さいうちに上司に報告しておこう」「仲間にも共有しておこう」「大きなミスになる前に力を借りよう」と、先の先まで考えることができます。でも、子どもは「スイミングに行くのめんどくさい。でも、今日行っておけば、別の日に振り替えて知らない人たちの中で泳がなくてすむ」といった「今やっておいたほうが得をする」という考えが乏しいのです。直後のプラスのことばかりに目がいってしまうのですね。ゲームや動画は「今やりたい」「今見たい」、お風呂や宿題は「今やりたくない」……。

 もちろん、「やりたくないから後まわし」、ということもあるかもしれません。でも、この時期はまだまだ、そういった認知機能が未熟であることが大いに考えられます。ほとんどの子どもが、まだ「目の前」のことしかよく見えていないと思っていいでしょう。からだも成長して、言葉も達者になるこの時期。つい大人と同じ感覚で見てしまいがちですが、とにかくまだ「成長中」というところを思い出してあげてください。

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三宅智佳
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