安浪:それはありです。コロナの影響で、家で模試を受けても、きちんと成績表を出してくれる塾も増えました。
矢萩:そうやって、いろいろ選択肢を探っていくことが大事かな。わからないところは塾の先生を巻き込んで、聞いてみてもいいと思う。
■親御さん自身の価値観は
安浪:「お金ももったいない」ということがちょっと書かれているので、親御さん自身の価値観も問い直したほうがいいかもしれません。例えば通塾がキツいと相談された時に授業を間引くことを提案しても、「それって授業料がもったいなくないですか?」と親御さんに聞かれることがあります。「授業料をドブに捨てるようなものですよね?」って。まあ気持ちはわかりますが、お金を無駄にせずに、子どもも苦しまず、学力は上げたいというのは虫が良過ぎるというか…。それにもし1円も無駄にしたくない、というのであれば、そのご家庭の一番大事な価値観はお金、ということになりますよね。
矢萩:そうですね。6年になる前は「やる」と言ったのに、6年になったら「やめたい」という話も実際よくあることなんですよ。だって、勉強も野球も4、5年の時より、6年になると密度が高くなりますよね。特に塾はやることが圧倒的に増えますから。4、5年のスケジュールや密度感だといけると思っていたけれど、いざ6年になってみたら無理だな、と思う感覚はすごくわかります。それに、つい親はお金と子どもの覚悟をトレードオフにして考えてしまうんですよ。「お金は出すから、あなたの覚悟を見せなさい」みたいなね。でも、大人なら一度言ったことをやり切るのは大事かもしれないですが、日々成長している子どもにそれを迫るのは厳しいかな。子どもって日々変化しているし、覚悟も変化するものなのです。じゃあどうしたらいいか、っていうと、いったん親がお金と子どもの覚悟を切り離して考えたほうがいい。
安浪:それはありますね。まずは本人がそこまで受験をしたいと思っていますか、というところですね。塾がしんどい、と言っている子どもでも、少しラクな方法で勉強を続けられる方法を提示してあげると、「それだったらやる」という子って、意外に多いですよ。
矢萩:塾を続ける、続けない、の2択ではなくて、グラデーションの方法を提示してあげる。塾だって今の塾でなくて他でもいいのかもしれない。志望校ももう一度話し合ってみる。とにかく、何を選ぶにしても、「お母さんが言ったから」とか「なんとなくそうした」ではなく、自分の選択にしっかりとした納得感を持たせることが大事です。そうでないと後から問題になったり、人のせいにしたりすることも少なくありません。
(構成/教育エディター・江口祐子)
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