発達特性の強い子の中には、宿題や片づけ、着替え、お風呂など親が何度言ってもやらなかったり、忘れてしまったりする傾向があります。声かけやタイミングを工夫してみてもうまくいかないと悩む親御さんも多いのではないでしょうか。発達科学コミュニケーション代表で臨床発達心理士の吉野加容子さんは「二つのステップを踏むことが大事」だと語ります。吉野さんに解決の手がかりを聞きました。

MENU やりたくなる「しかけ」が必要! ポイントは「分解」と「選択」 擬音語、擬態語で興味をくすぐる

やりたくなる「しかけ」が必要!

――発達障害やグレーゾーンの特性を持つお子さんが、なかなか宿題や片づけを始められないのはなぜなのでしょうか。

 そもそも人間って、できそうなことはやりたくなる、できそうにないことはやりたくなりにくいという性質があるんです。単に「片づけをしなさい」と言われても、やりたくなかったりどこから手をつけていいかわからなかったりすると行動を起こせない。やりたくなる「しかけ」が必要なんです。

 親からすれば、「宿題のプリントたった1枚、5分やれば終わるのに」と考えてしまうかもしれません。ただ、やるべきことをまだ習慣化できない子にとってはものすごく大変なことなので、それを踏まえた対応が必要です。子どもの脳はまだ発達中ですから。

ポイントは「分解」と「選択」

――具体的にどんなことをしたらいいですか。

今回は二つのポイントをご紹介します。

1)指示を「分解」して具体的にする

 子どもが指示を受けて行動を起こすためには、「段取りを考えること」と「段取りの通りに動くこと」、この二つのステップが必要です。ただ、ステップが二つもあると途中でやりたくなくなってしまう。例えば「片づけなさい」と言われて、「どうやって片づけようかな」と考えるうちに「やっぱりゲームやりたいなあ」と気が散って手が止まるなんてことはよくありますよね。

 それを防ぐためには、指示を分解して段取りをしてあげるのがおすすめです。「ここにある服をかごに入れてね」などと具体的な行動を示してあげれば、子どもは行動するだけ。1ステップの作業になります。これならできそうな感じがしませんか? この方法でお子さんがやってくれたら「ありがとう」「かごに入れられたね」と返して、「じゃあ、あそこの本も本棚に入れようか」と次にやることを伝えます。そんなふうに、できそうな指示を一つずつ積み重ねていくことで行動を起こしやすくなります。

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布施奈央子
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