「休んだ分の宿題がたっぷりあり、高学年はちょっとかわいそうでしたが、学校から休んでOKと言ってくれるので、後ろめたい気持ちがなく休むことができました」と女性は振り返ります。

 学校生活だけでは味わえない子どもたちのこうした“ほんもの体験”は、情報があふれる現代を生きる子どもたちだからこそ「インパクトが大きい」と元小学校教員で教育評論家の親野智可等(おやのちから)さんは解説します。

「図鑑や動画を見て『だいたい知っている』、というのが今の子どもたちだけれども、つい知っているような気持ちになってしまっているんです。ところが現地へ行って、実際に本物を見て触って体験すると、『こんな匂いがするんだ』『なんかぬるぬるすね』『稲ってけっこう切れないんだ』と感じることができます。あるいは宇宙が好きならJAXAへ行って、本物の宇宙服を見ると、『これが本物なんだ』『思ったよりでかいな』といったように、感動を伴う体験は、子どもにとってすごく大きなインパクトになるんです。バーチャルの動画や図鑑、加工された二次情報とは、インパクトの度合いが違います。こうしたほんもの体験が私は大事だと思っています」

子どもの人生に「知識の杭」を打ち込む

 親野さんはこうした体験を「知識の杭(くい)」と表現します。

「インパクトのある大感動を伴った本物を体験することで、それに対する興味関心がぐうっと高まり、確実に心に引っかかるようになる。これを私は『知識の杭』と言っています。

 “人生”という流れる川に、体験によって知識の杭がばーんと打ち込まれるんです。そうすると、生活の中でそれに関する情報が流れてきたとき、引っかかるようになるんですね。時間が経てば経つほど知識は溜まっていって、やがてそれらが教養や学力になる。

 ところが知識の杭がないと、情報がいろいろ流れてきても、全部流れ去ってしまうんです。そういう意味で、ラーケーションはほんもの体験を必ず伴うのですごく子どもにはインパクトがあります」(親野先生)

(取材・文/大楽眞衣子)

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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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